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みら

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kaede🍁
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りゅず
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夕方。
部屋には静かな時間が流れていた。
深澤は何度も時計へ目を向けては、小さく息を吐く。
あと少しで照が来る。
そう思うだけで胸が苦しくなった。
渡辺はそんな深澤を見ながら、何も言わず隣に座っていた。
宮舘も仕事を終えて帰宅し、三人で静かに夕方を待つ。
その時だった。
――ピンポーン。
インターホンが鳴る。
深澤の肩が大きく震えた。
「……。」
立ち上がろうとしても足が動かない。
宮舘がモニターを確認すると、そこには岩本が立っていた。
少し疲れた表情を浮かべている。
「照だよ。」
宮舘は振り返り、優しく言った。
「迎えに来た。」
深澤は俯いたまま小さく頷く。
「……怖い。」
その一言に、渡辺は深澤の肩へそっと手を置いた。
「大丈夫。」
「照は逃げなかった。」
「ちゃんと全部終わらせて来た。」
宮舘も静かに微笑む。
「行っておいで。」
「ちゃんと話しておいで。」
深澤はゆっくりと立ち上がる。
震える手で涙を拭い、一歩ずつ玄関へ向かった。
宮舘がドアを開ける。
「照。」
「来てくれてありがとう。」
岩本は深く頭を下げた。
「館さん。」
「翔太。」
「昨日から、本当にありがとうございました。」
宮舘は首を横に振る。
「礼はいらないよ。」
「ふっかを迎えに来たんでしょ。」
渡辺も腕を組みながら笑う。
「俺たちは預かってただけ。」
「今はふっかだけ見ろ。」
岩本は小さく「うん」と頷いた。
その視線がゆっくりと深澤へ向く。
深澤も恐る恐る顔を上げる。
目が合った瞬間、二人とも言葉を失った。
昨日まで毎日見ていたはずの顔。
それなのに、まるで何年も会っていなかったような気がした。
岩本が一歩近づく。
「……ふっか。」
深澤の瞳に涙が浮かぶ。
岩本はもう何も迷わなかった。
そっと深澤を抱き寄せる。
「ごめん。」
「本当に、ごめん。」
深澤は岩本の胸へ顔を埋める。
「……照。」
「俺も、ごめん。」
二人の声は震えていた。
「怖かった。」
岩本が絞り出すように言う。
「昨日、お前がいなくなって。」
「一時間探しても見つからなくて。」
「人生で一番怖かった。」
深澤は岩本の服をぎゅっと握る。
「俺も。」
「照を失うのが怖かった。」
「信じたいのに、信じ切れない自分が嫌だった。」
岩本は深澤の背中をゆっくりとさすった。
「全部終わった。」
「監視カメラも確認できた。」
「嫌がらせだったって、相手も認めた。」
「ちゃんと証明できた。」
深澤は静かに頷く。
「……うん。」
「だてから聞いた。」
岩本は少し身体を離し、深澤の目をまっすぐ見つめた。
「だから。」
「今度は二人だけで話したい。」
「家じゃなくて。」
「思い出の場所へ行こう。」
深澤は涙を拭いながら、小さく笑った。
「……うん。」
「行こう。」
その返事を聞いた宮舘と渡辺は、ようやく安心したように顔を見合わせた。
二人はまだ完全に仲直りしたわけではない。
けれど、お互いの目を見て言葉を交わせた。
それだけで、止まっていた時間は、少しずつ動き始めていた。
___________
岩本の車は、夜の街を静かに走っていた。
車内には音楽も流れていない。
聞こえるのは、エンジンの音だけだった。
深澤は助手席から流れる景色をぼんやり眺める。
岩本も何度か言葉を探すように口を開きかけては、閉じていた。
やがて車は、小さな公園の前で止まった。
「ここ……。」
深澤が小さく呟く。
「覚えてる?」
岩本が優しく笑う。
「付き合って間もない頃、よく来てた。」
深澤も少しだけ笑った。
「うん。」
「仕事終わりに缶コーヒー飲みながら話してた。」
「懐かしいね。」
二人はベンチへ腰を下ろした。
夜風が心地よく吹き抜ける。
しばらく沈黙が続いたあと、岩本がゆっくり口を開いた。
「まず、ちゃんと謝らせて。」
「ふっか。」
「ごめん。」
「俺がもっと早くマネージャーに相談していれば、こんなことにはならなかった。」
深澤は静かに首を横に振る。
「違う。」
「俺も悪かった。」
「照に聞けばよかったのに。」
「勝手に一人で苦しくなって。」
「最後には家まで飛び出して。」
「本当にごめん。」
岩本は優しく微笑んだ。
「お互い様だな。」
その一言に、深澤は少し肩の力が抜けた。
岩本はバッグから一枚の封筒を取り出す。
「これ。」
中には制作会社からの報告書の写しと、監督から預かった謝罪の手紙が入っていた。
深澤はゆっくり目を通す。
監視カメラの確認。
嫌がらせを認めたこと。
制作側が正式に対応すること。
一つひとつ読み進めるうちに、張り詰めていた糸が少しずつほどけていく。
「……本当だったんだ。」
深澤の目から涙がこぼれた。
「照を疑いたかったわけじゃない。」
「でも、不安が止まらなかった。」
岩本はそっと深澤の手を握る。
「知ってる。」
「ふっかは俺を疑ってたんじゃない。」
「俺を失うのが怖かっただけなんだよな。」
深澤は泣きながら何度も頷く。
「照がいなくなるくらいなら。」
「もう何もいらない。」
「香水なんてどうでもいい。」
「ただ、今までみたいに笑って『おかえり』って言ってほしかった。」
岩本はその言葉を聞き、深く息を吸った。
「俺も。」
「昨日、お前がいなくなった家に帰った時。」
「静かすぎて。」
「初めて、この家はふっかがいるから家なんだって分かった。」
深澤は涙をぬぐいながら笑う。
「俺たち。」
「似てるね。」
「大事だから、怖くなる。」
岩本も笑った。
「だから約束しよう。」
「もう一人で抱え込まない。」
「どんなに小さいことでも話す。」
深澤は少し考え、小さく頷く。
「うん。」
「でも照も。」
「嫌がらせを受けてるなら、一人で我慢しないで。」
「俺にも話して。」
「心配くらいさせてよ。」
岩本は少し照れたように笑った。
「分かった。」
「これからはちゃんと頼る。」
「ふっかにも。」
二人はしばらく手をつないだまま、夜空を見上げる。
岩本がポケットに手を入れると、小さな箱を取り出した。
「本当は。」
「ドラマが終わったら渡そうと思ってた。」
深澤は驚いた表情で箱を受け取る。
そっと開けると、中にはシンプルなペアブレスレットが入っていた。
派手ではない。
仕事中でも身につけられる、落ち着いたデザインだった。
岩本は少し照れくさそうに笑う。
「タイミングを考えてたら、こんなことになっちゃった。」
深澤は涙を流しながら笑った。
「もう。」
「そういう大事なサプライズは、ほどほどにして。」
岩本も笑う。
「そうだな。」
「次からは、ちゃんと相談する。」
深澤は箱を大事そうに胸へ抱き寄せた。
「ありがとう。」
「俺、一生大切にする。」
岩本は優しく深澤を抱き寄せる。
「帰ろう。」
「今度こそ。」
「二人の家に。」
深澤は安心したように岩本の肩へ頭を預け、小さく頷いた。
「うん。」
「ただいまって、ちゃんと言いたい。」
二人は手をつないだまま立ち上がり、ゆっくりと車までの道を歩き始めた。
コメント
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ああ…もう、この二人、本当に……!( ;ᯅ; ) 深澤くんが「怖い」って言いながらも玄関に向かうとこ、岩本くんが「人生で一番怖かった」って絞り出すとこ、お互いに「大事だから怖くなる」って気づくところ…全部が刺さりました。ペアブレスレットのサプライズも、タイミング悪すぎて逆に泣ける。 14話、続きも読ませてください。まだ二人の関係はこれからだと思うし、ちゃんと見届けたいです。