この作品はいかがでしたか?
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「っおい!いぬいぬこ!あれ!!」
まんじゅうが驚いた声で花畑の中心を指差す。
そこには、夕陽に照らされ、白い百合の中に一人佇む女性がいた。
それは、この廃れた世界には不似合いなほど美しい存在だった。”ウルフカット”の髪が風に揺れ、その姿は透き通るような神秘的なオーラを纏っていた。
「「誰だ…アレ?」」
まんじゅうといぬいぬこが同時に呟く。
おそらく初対面のはずだが何かが引っかかる。思い出さなければいけない”なにか”を忘れているような…
一方、百合の花々に囲まれた彼女もまたこちらの存在に気がついたようだ。
しばし驚いた表情を見せたのち、こちらへ向かってゆっくりと歩いてくる。
「こんねこ、久しぶり…かな?」
彼女の言葉を聞くと同時に頭、いや右目に激痛が走る。
「うっ…あぁぁ!」
誰のものか分からない記憶の断片が流れ込んでくる。悲鳴、苦痛、怒りといった負の感情。そして微かな喜び、癒やし、希望。
「っこれは…何だっ」
しかし、痛みに耐えかねたいぬいぬことまんじゅうは気を失って倒れてしまった。
「まんじゅうさん!いぬいぬこさん!気を失ったの?どうしよう…鼬さーん来てー!」
薄れてゆく意識の中、叫ぶ彼女の姿と重なる微かな記憶が思い出されてゆく…
目が覚めるとそこは…
「また、病室…?」
しかし、とても整っていて綺麗だ。それに窓からの景色を見るに、ここは学校の中。おそらくは保健室なのだろう。
「目が覚めたか…まんじゅう」
どこかで聞き覚えのある声がした
そこにはどこかで会ったことがあるような、防弾チョッキを着て、やたらとミリタリーな男がいた。
「久しぶりだな…」
彼はこちらを知っている。いや覚えている?しかしこっちは何も覚えていない。
「誰ですか、あなた?」
一瞬驚いた顔をしながらもすぐに理解したのか自己紹介を始める。
「俺は”鼬”君たち二人と同じ、ねこゆりすとの生き残りだ。」
起き上がったまんじゅうは鼬に案内され校内を歩いていた。
いぬいぬこは先に目を覚ましたようで、あの女性”猫百合イッサ”とかつて教室だった物資置き場にいるようだ。
「猫百合…イッサ。どこかで…」
また頭痛が襲う。掴めそうで掴めない記憶の断片に苛立つ。
鼬が口を開く。
「俺たち、ねこゆりすとはかつてこの地で一緒に暮らしていた仲間だった。君たちは忘れているみたいだが。」
「暮らしていた?俺達が…」
まんじゅうは困惑しつつ問い返すが、鼬は肯定するように頷く。
「そうだ。だが、この世界で起きた“何か”が、お前たちからその記憶を奪った。俺も全部は覚えちゃいない。だが、イッサさんは、彼女はすべてを知っているはずだ。」
歩みを進める中で、ふと前方に見えた一つの扉が目に留まる。
その向こうから聞こえてくるのは、いぬいぬことイッサの声だった。
「ちょっやめ! や め ろ ー っ」
「逃げないでー!良いから着てみてってばーー!」
鼬は呆れながらも扉の前で立ち止まり、振り返る。
「話をする前に、心の準備をしておけよ。彼女に会えばきっと、お前たちの失われた記憶はゆっくりと戻り始める。だが、それが…良いことばかりとは限らない。」
中には、かつての教室と思しき広い空間が広がっていた。
窓から差し込む夕日が、教室内の荒れた机や物資に影を落とし、どこか寂寥感を漂わせている。その中央で―――
「やっと来た!助けt」助けを求めるいぬいぬこ。
「ほら次はコレを着なさぁぁぁぁ」やたらフリルの付いた服を着せようとするイッサさん。
なんだこれは…と思わずため息を吐きながらも、まんじゅうは微かに見え始めた希望を握りしめる。
いぬいぬこ、まんじゅう、鼬、そしてイッサ。彼らは進み始める。歪んだ世界でただ明日を、希望を掴むために。
コメント
2件
流石は主君、どんな時でも癖に真っ直ぐだなぁw
ぎゃー助けて〜的な所であ、これ女装させられそうになってるなってすぐになったwww