大きくなっていくうちに色々なことを学んだ。社会常識、色んな本、文化、宗教、精神異常、神、様々なことを学んでいった。
そのうち、この娘と話していると、不思議な目で見られることも知った。可笑しいことかは置いておいて、人前ではこの子と話さなくなった。
そのうち、病院に通うこともなくなっていった。退院したときは私より大人たちが喜んでいた。
孤児院での生活も気に入っていたし、通院もなくなり、不自由なのはこれと会話をする時を見計らう必要が有ることだけだった。
よく本も読んで、友達と遊んで、勉強して、
昔から読んでいる本は、気づかぬうちに何読もしていた。その時、私の頭には育てていた花のことなど無かった。
「ストラウスさん、」と、ある日呼ばれた。
嫌な予感がした。ここは孤児院。引き取られてここを離れる子たちをたくさん見た。そして何故名字なのか、それは分らないが今まで指名を受けてきた子達は、名字で呼ばれ、そのままこの場所を離れていく。
行きたくなかった。私はここが気に入っているのに。
「ストラウスさん!」
何度も呼ばれていることに初めて気づく、しかたなく行くと、怒る先生と黒服を着た知らないおっさん。
嫌な予感が的中したのだろう。
「おめでとう、晴れて卒業よ。」おめでとうもなにもない。これからどうなるんだろう、と不安感が寒さとなり体を震わせる。
そのまま最後の挨拶をして、なんともあっさり孤児院の生活は幕を閉じる。
持っていったのは、みんなとの写真と思い入れのある本、服だけである。
12歳の春頃、その時からだろう
狂ったのは
「お前がなんで指名されたかわかるか?」黒服に話しかけられる。当然「知らない」と答えると、黒服はガハハと野太く笑い「そうだな、俺もボスの意図は知らねえ。」「ボス?」思わず聞き返す。ボスが居てそれが命令したかのような言い回しだ。
「そう、ボス。これからお前は俺らの組織に入ってもらう。すまんが拒否権はなしだ。」
「理不尽」またガハハと笑う男は、まあそう言うな、と一蹴し。「俺のことはタスクって呼べ。うちではみんなアナザーネームだ。」
自分の名前は使えないらしい。それなら
「アベル」「あ?」「アベルって呼んで。」「アベルってなんだ?」と聞き返される。
「人類最初の加害者」とだけ言うと「不謹慎だな。なんでそんなのなんだ?」また聞き返される。正直に言う。子供の時の鮮明な鮮血の思い出。「3人殺したから。」タスクは一瞬驚くが。「どうせ犯罪集団だ」と言って納得。普通に納得できるところ、組織に入るのがますますの怖くなる。
「どんな組織なの?」今度はこちらが聞く「宗教組織だ。」「どんな?」「ズイズイ来るな…我らは過ちを犯した、そうだ皆がだ。神は怒っている。神の怒りを鎮めるのは神への奉納物である。」タスクは丁寧な口調に切り替えて言う。でも普通の宗教ではと思っていると。タスクは続けて。「神は生贄と人類の過ちを正す者達を求めている。」ヤベえかった。
「入りたくない。」普通に嫌だ。「あんた神は信じるか?」「信じる。」即答する。付け足して「今隣りにいる。」しまったと思ったが。「へぇ。」と反応され困る。「隣りにいると言っても、あんたは変な顔しねえのか?」「慣れっこだ。」その言葉の意味を理解することはわからなかったが、
「神を信じるなら、許されたいと思うだろ?」「う…ん……まあ」「なら話は早い。許しを請うために行動するのが俺らだ。そしてボスにはまず逆らえねえ。ボスは強い。最強だ。絶対にな。だから無理だ。」引っかかる。「最強でも何人で掛かれば倒せるでしょ、所詮人間だし。」そう思った。「そうとも言えねえ。」「なんで?」
タスクは言った。人生観を大きく変える一言を、いとも簡単に。
「俺らは必ず儀式を行う。辛い物だ。ただし、行えば能力を扱えるようになる。」ありえない言葉が連なる。処理が追いつかず、考えていると。「信じてねえな、それじゃあ論より証拠、見せてやるよ。」そう言ってから。「お前今何で移動してる?」何を質問してる?「車だ」当たり前だ。「違う。」は?と思わず口に出たのを笑うタスク。「お前には車の室内に見えてるだろうよ。でも車にしては遅くないか?壁もねえ。」こいつは何を言ってるんだ。「は?車に壁はねえしこの速度で間違いねえだろ。」パチィンと指を鳴らすタスク「どうだ?今どうやって移動してる?」意味がわからなかった。「歩きだけど。…?」「さっきは車って言ってたけどな。」あれ?どうしてだ?さっきの言動と自分の考えが一致しない。こんがらがる。それを見てか知らないが。「お前、可愛いな。ガハハ!」こんなおっさんに言われても嬉しくない。「兎も角、俺が授かったのは、人一人の認識を書き換えることだ。なかなか使い勝手が良くてな。」「うん?…そうなのか?」まだこんがらがっている頭を整理しているうちに、
「ついたぞ。ここが組織の拠点だ。」
言われて目を向けた。先は「ボロい廃墟…」「女の子はうるせえなァ。贅沢言うな。」「孤児院でぬくぬく育ってんだよ。こんなとこ来させられて、文句一つ言っちゃ悪いか?」キレ気味で言うと「ボスに会いに行くぞー」と、話を変えられる。
従うことしかできない。多分ボスは躊躇なく人を殺すだろう。確信に近いものもある。こんな宗派のボスだ、従わなければ私も殺されるだろう。
考えてもなにも出ないし、
なにが待つか、考えたくもないが。
そう思い、建物内に入っていく。
諦めて
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