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その時、飲み物が運ばれてきて、私たちは一旦ソファに座る事になった。
怖い物を前に、私と恵は腕を組んだままなので、向かいのソファでは尊さんと涼さんが「解せぬ」という顔で座っている。
「……あ、可愛い」
私が目を留めたのは、シャネルのリングだ。
有名なラムレザーのキルティングを思わせる模様がついていて、いたってシンプルだけど高級感がある。
その頃、恵はブシュロンのリングを見ていた。
「……すっごい重なってますね。……こんなにいいや」
彼女はキャトルシリーズを見て、細いリングが何重にも重なったように見えるデザインを見て、おののいている。
「……でもこれ、黒い奴、涼さんがつけたら似合いそうなんだよな……」
恵がボソッと呟いたのを見て、涼さんは「はいはーい」と言って彼女が言ったデザインを指に嵌めている。
「……うん……」
恵は自分の好みというより、涼さんにつけてほしい物を優先して考えているようだ。
「朱里、これは?」
尊さんが指さしたのは、カルティエのトリニティリングだ。
ホワイトゴールド、ゴールド、ピンクゴールドの三色の細いリングがねじれてついていて、優美で女性らしさがある。
「素敵ですね……。あ、尊さん、これも可愛い」
私が指さしたのは、エルメスのレオパード柄のリングだ、
デザインそのものはシンプルだし、カジュアルに付けられるので、とても自分好みだ。
「それは普段用で別途買ってやるよ。ペアリングは別のどうだ?」
「あぁ……、確かにこれだと色違いというか、別の柄が……可愛い系になりますね。でもこっちの革がついてるリングも可愛い~」
「うん、じゃあ、そっちも普段用に買ってやるから、ペアリングは別案な」
「…………尊さん、エルメス嫌いですか?」
さっきからどうにも、エルメス以外に誘導されている気がする。
「はっ、もしかして高い……、高いですよね!? ごめんなさい!」
「いやいやいやいやいやいや。違う。今のレオパードと革のと、両方買って、さらにペアリング買っても余裕だ」
「……あー、じゃあデザインが好きじゃないとか?」
「そうじゃないんだが……。難しいな」
私たちがそんなやり取りをしている間にも、恵はブシュロンに搾ったようで、シンプルなリングにするかダブルにするか、真剣に悩んでいる。
涼さんはワクワクした表情で恵の選択を見守っていたけれど、恵がスッ……と細いシンプルなリングを選ぼうとした手をガシッと握り、「よし! 二人でダブルにしようね! アイスもダブルのほうが嬉しいでしょ!」と言って決めてしまった。
恵はダブルのホワイトダイヤモンド、涼さんはブラックダイヤモンドでお買い上げらしい。
「どうせならピアスも同じのつけたら? ほら、これなんてまったく同じだよ。一見フープっぽく見えるから、恵ちゃんのクール系スタイルに似合うと思う」
涼さんはテレビショッピングのMCのように、流暢に恵を誘導していく。
「可愛い……、ですけど……、これイヤリングタイプじゃないですか。落としたら恐い恐い」
「じゃあ、こっちの三色のとか」
「……メインは指輪でしょう? ピアスは物凄くシンプルでいいです。これで」
そう言って、恵は指輪と同じホワイトダイヤモンドの細めのフープピアスに決めた。
「じゃあ、俺も恵ちゃんとおそろにしよ。あと、こっちのブラックのイヤークリップもお願いします」
意外と恵のほうがすんなり決まってしまった。
外商さんたちは、ニコニコ笑顔だ。
「朱里、さっきのカルティエの三連のは? 俺用にシルバーとブラックのもあるし。色合い的に、ちょっと中村さん達と似てると思うけど」
「うーん……、じゃあ……」
「ついでに、ダイヤついてるやつにしないか?」
「いや、びっしりついてたら会社につけて行けなくないです?」
抵抗すると、尊さんは一瞬視線を外してから、食い下がってくる。
「じゃあ、一粒ダイヤのほうで。ピアスも同じトリニティでいいか?」
「はい……。尊さんは……、穴空いてませんもんね……。鼻輪つけます?」
「牛にすんな」
「キャトルミューティレーション……」
「だからオカルトにいくな」
そんな感じで決定したけれど、先日、焼き肉の時にもらったセットと大差ないように思える。
「なんか疲れたね……」
「マジ疲れた」
私と恵はそう言い合い、ちゅる~とオレンジジュースを飲む。