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読切。
また、見ている側が主人公です。
まただ。何回も、何百回も、自分は同じ景色を見る。
生暖かい雨音が、湿り気を帯びた重たい空気と共に、薄暗い自室の窓を執拗に叩き続けている。
壁に掛けられた時計の秒針は、零時ちょうどを指したまま凍りついたように動かず、
部屋には耳鳴りのような不気味な静寂だけが深く沈殿していた。
ふと、背後の闇から刺すような視線を感じて振り返るが、そこには街灯のわずかな光を吸い込んだ自分の影が、
まるで意志を持った別の生き物のように異様に長く、歪に伸びているだけだった。
逃げ場のない焦燥感と、心臓の鼓動を急かすような予感に突き動かされ、
自分は震える指先で、氷のように冷え切ったドアのノブを強く掴んだ。
扉を開けて外へ飛び出した瞬間、天を割るような轟音と共に、
視界を真っ白に塗りつぶす土砂降りの雨が、自分の体温を皮膚の奥から容赦なく奪い去っていく。
街灯ひとつない深淵のような暗闇の中、自分はひたすら泥を跳ね飛ばし、
肺が焼けるような呼吸を繰り返しながら無我夢中で走り続けたが、どれだけ進んでも景色は一切変わらず、
なぜか呪われた磁石のように元の玄関の前に引き戻されてしまう。
雨足はさらに激しさを増し、叩きつける水音の隙間を縫って、「次は逃がさない」「どこへ行くんだ」という、
自分自身の声と寸分違わぬ悍(おぞ)ましい囁きが、鼓膜のすぐ裏側で幾重にも重なって響いた。
恐怖で膝が砕け、冷たい泥濘(ぬかるみ)に這いつくばった瞬間、目の前の地面が生き物のように脈打って震え、
そこから無数の「自分」の手が這い出してきて、逃げ惑う自分の足首を万力のような力で掴み、
底なしの暗闇へと引きずり込もうとする。
抗おうと必死に絞り出した叫び声は、冷酷な雨音に一瞬でかき消され、
意識が遠のく視界の端で、泥に塗れた自分自身の顔が、この世のものとは思えないほど歪に笑うのを見た。
その笑い声が雨音と重なった瞬間、鼻を突くような古い埃と湿り気の混じった、あの部屋の匂いが再び立ち込めた。
ふと気がつくと、自分はまたあの薄暗い自室のベッドの上に、何事もなかったかのように座っていた。
窓の外からは相変わらず、あの聞き慣れた生暖かい雨音が、
皮膚にへばりつくような不快な音を立てて静かに、ただ静かに聞こえてくる。
「また、ここか……」と絶望に唇を白く噛み締めながら、血の気の引いた顔で壁の時計を見上げると、
短針も長針もやはり、あの零時ちょうどを指して、残酷に時を止めたままだった。
この終わりのない円環の地獄から逃れる術を、今の自分はまだ知らない。
抗えない衝動に突き動かされるまま、自分はまた震える手でドアノブに手をかざし、外に行くが……。