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第16話 動き出す
あの戦いから一週間近く経った。
光希はもうそろそろ退院して部隊に復帰しないといけない時期だ。
藤原にもそう言われていた。
「今日から動いていくかー!」
光希は病院のベッドから起き上がって実里のところまで行った。
「実里、ありがとう。
いっぱい迷惑かけたかもだけど。
今日から部隊に復帰するよ。」
「いや、まだ無茶です…。
まだ治ってないじゃないですか!
とにかく足は…。」
「いや、いい。僕は大丈夫だから。」
光希はキッパリとそう言い、療養棟から出ていった。
療養棟から出たら、目の前に近松がいた。
「師匠…!おはようございます。」
光希が軽く礼をした。
近松はニッコリと笑ったが、少し険しい顔をした。
「…御主、その足……。」
「大丈夫ですよ。ただのかすり傷です。」
光希は微笑み返した。
「…わしらが不甲斐ないせいでお主のような15歳未満の若い者まで
戦場に立たせなければならなくなった。すまんのう。」
「いえいえ。そんなことありません。」
光希は笑顔を絶やさなかった。
「こんな時に悪いんだが、御主らに新たな任務を持ってきた。
藤原さんに言われてな。光希に渡せって。
内容は部隊棟に戻ってから読めとのこと。
よろしく頼むのう。」
「はい!」
任務。
この響きにどこか懐かしさを感じていた。
第一部隊棟。
光希は近松からもらった手紙を出し、開いた。
一枚目には日本各地の異常エネルギーの波形が記録されている。
その中でも、赤く染まった”関東全域”の波形が目を引いた。
「このエネルギー反応…..明らかに異常だ。安東のときとは桁が違う」
「本当に”あの悪魔”の再出現なのか!?」
『今朝、調査部が”魔力の裂け目”を確認した。一ーそこには”魔城”という名が刻まれていた』
「…..!」
この文章に目がいった。
“魔城”ーーそれは幻夜が率いていた、かって世界を破壊しかけた悪魔集団の本拠名。
また、幻夜の名字でもある。
幻夜は悪魔の始祖と呼ばれる人物だ。
光希は第1部隊のみんなを集めて言った。
「…ということだが、それが意味するのはひとつだ」
光希が低い声で言った。
「幻夜が動き出す。」
この任務の命令を受けてから、2日後に藤原に第1から第4部隊まで本部に呼び出された。
11人。
「”影/原”という場所に、魔力の大きな反応が出た。敵の前哨部隊が活動を始めたようだ。
第一、第二、第三、第四部隊を中心に編成する。
光希、日向、佳代、蓮人、柑奈、晴翔、林、西円寺一一前線へ向かえ。」
全員が敬礼し、光希は代表で宣誓をした。
「よし、解散!」
隊員たちがそれぞれ出動準備に向かった。
だがその夜。
誰も知らぬ地の奥深く、漆黒の闇の中で、重々しい扉が開かれる。
「….”佳代”か」
低く、凍えるような声が響く。
「貴様の目で…もう一度、真実を見届ける」
その声の主。かつて母を殺し、佳代の記憶を奪った悪魔。
“幻夜”が、動き出していたーー。
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