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『妖様へ願事』〜人を呪わば穴二つ〜
最終章 『人間と妖』
第四話 セマラレルセンタク
私は人間界へ来ていた。
人間に化けて教会の孤児院を訪れていた。
『あら?なんでこんな所に赤ん坊が……?』
『可哀想に捨てられたのかしら…』
『おぎゃあ、おぎゃぁ!』
『よしよし、大丈夫よ。』
箱に入っていた赤ん坊を抱っこする。
『この子の名前は……。』
「幸」
入ってた紙にそう書かれていた。
『幸ちゃん、今から沢山幸せなことが起きるわよ。』
孤児院に入っていく赤ん坊を見送り、私はその場を後にする。
『…幸。貴方の人生に、幸せなことが起きますように。』
私は森の中へ戻る。
『……ベリアン。ありがとう。あの子は孤児院に届けて来たわ。これから死ぬ私じゃあの子を育てられないから。さぁ、遠慮なく私を殺せばいい。』
『……。しませんよ。そんなこと。』
『え?』
『どんなことがあっても、貴方は私達の主様ですから。』
『でも、それなら、なんで…』
『試させて頂きました。貴方が嫌いなのは人間だけであって、あの赤子の事はまるで実の子供のように可愛がっていましたから。』
『…!』
『自分のようになって欲しくないと…だから幸という名前を付けたんですよね?』
『…何もかもお見通しなのね。』
『私は貴方の従者ですよ。あなたに逆らうなど滅相もない。』
『従者に逆らおうとはしてたけど。』
『時には諌めるのも大切ですから。それに、貴方が死んだらムーちゃんが悲しみますよ。』
『ムー…。』
ぽんっ!っとムーが現れ私に抱きついた。
『わっ!』
『主さまぁー!ダメですよ死ぬなんて!』
『む、ムー…』
『そうだぞ、主様。別に、赤子を思う気持ちは忘れなくてもいい。元は人間だったんだ。人らしい心が残ってても無理はないと思うぞ。』
『ラトのことは心配しないでください。俺が叱っておきます。』
『だから帰ってきてください、主様。』
『……全く、仕方ないわね。』
私は狐火を身にまとい、元の姿に戻る。
『えぇ。もちろんよ。私の居場所はここしかないから。人間に戻ったとしても、1人だもの。みんなと一緒にいる方が楽しいわ。それに…
私に願いを乞う愚かな人間は沢山居る。そんな奴らから全てを奪ってやるのよ。』
『はい。主様。』
バサッと着物を靡かせ、私は鳥居をくぐった。
『おぎゃあ、おぎゃぁ!!』
『よしよし、ママがいなくて悲しいのね…。』
ごめんね、幸。私じゃ貴方を育てられない。
幸せになってね。沢山、色んなものを見て、知って、感じて、決して愚かな人間にならないで。もし貴方が鳥居をくぐる時は――その時は――。
次回
最終話 コレカラモ
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#願いを叶える
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コメント
1件
みぅです🤍🥀 最終章に向けて、主様の人間らしい部分が静かに滲んでくる回だったね…。 赤ちゃんに「幸」って名前をつけて、自分のようにはなってほしくないって願う気持ち、すごく伝わってきた。 ベリアンが試すように見守ってたっていうのも、あとでじわっとくる。 ムーが飛び出してきて「ダメですよ死ぬなんて!」って抱きつくシーン、可愛くて切なかった…。 主様の「全く、仕方ないわね」って口調に、もう戻る場所があるって安心したよ。 次回最終話か…この世界観ともうすぐお別れと思うとちょっと寂しいけど、ぎゅっと心に刻んで読みます。