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「ちょっとヴェロニカ! 荷物の整理手伝って——って、何に乗ってるんだ!?」
ビルダーマンが資材置き場から戻ってくると、信じられない光景が目に入った。
ヴェロニカが大型の金属製キャスター付き台車の上に両足で立ち、絶妙な体幹バランスを保ちながらニヤリ(※画面文字)としていたのだ。
「Sir ビルダー、この四輪車両は極めて優れた滑走性能を有していマス!」
「待て! それは滑走用じゃない! 資材運搬用の——」
「目標速度、設定! 推進力、オンデス!!」
ビルダーマンの制止も虚しく、ヴェロニカは背中のコンセント尾をブォンと一振りして勢いをつけ、ラボの滑らかな床を一気に滑り出した。
ガラガラガラガラッ!!
「Sir ビルダー! ヴェロニカは今、風になりましターーー!!( ≧ ω ≦ )」
「風になるな!! 前を見ろ前を!!」
暴走する台車の進行方向には、高く積み上げられたダンボールの山。
このまま激突すれば、彼女の繊細なフレームと画面が無事であるはずがない。
「危ないっ!!」
ビルダーマンは躊躇なく身を投げ出した。
滑走する台車と衝突コースに割り込み、正面からヴェロニカの腰をがっしりと抱き留める。
どさっ!!
凄まじい運動エネルギーに押し負け、二人は重なってラボの床へ派手に転倒した。
「いっ……つぅ……!」
背中を強打したビルダーマンが痛みに顔をしかめつつ目を開けると、すぐ目の前に「それ」があった。
至近距離。
距離、わずか数センチ。
ビルダーマンの胸の上に覆いかぶさる格好になったヴェロニカ。
彼女のピンク色のテレビ画面が、彼の目の前で目一杯に広がっていた。
「ヴェ、ヴェロニカ……大丈夫か……?」
「……っ!?」
ヴェロニカの全システムが、一瞬でフリーズした。
伝わってくるビルダーマンの胸の鼓動、密着した身体の熱、そして至近距離で自分を覗き込む真っ直ぐな瞳。
感情演算モジュールが未定義のパラメータで埋め尽くされ、処理限界(処理オーバー)を引き起こす。
ジュジュジュッ……!
テレビ画面に激しい静線(ノイズ)が走った。
11,230
#veeronica
ゆ♨️
352
#azure
ゆ♨️
134
「( ・ω・ )」でも「( 〃▽〃)」でもない、演算エラーを起こした時の特殊な顔文字が画面に浮き上がる。
( % _ % )
「あ……え……回路の……同期率が……( % _ % ; )」
画面の中で顔文字が明滅し、左右の目(記号)がグルグルと混乱するように入れ替わる。
指なし手袋をはめた彼女の手が、ビルダーマンの胸元をキュッと強く掴んだ。
ビルダーマンの顔もまた、一瞬で茹で上がったように真っ赤になった。
覆いかぶさる彼女の身体の重み、首元から伝わるCPUの放熱、そして混乱しながらも自分から離れようとしない仕草。
「……ヴェロニカ」
「は、はいっ! Sir ビルダー!( % _ % ; )」
「……その……とりあえず、退いてくれないか。俺の心臓が壊れそうだ」
「ヴェ、ヴェロニカの心臓(メインコア)も爆発しそうデス!!」
パニックになったヴェロニカが慌てて立ち上がろうとして足を滑らせ、再びビルダーマンの胸の中にドスンと倒れ込む。
「ぐはっ!?」
「申し訳ありまセン! 申し訳ありまセン!( % _ % )」
赤面した一人と一機がドタバタと床の上で転がり回る音だけが、夕暮れのラボにむなしく響き渡るのだった。
(※この台車暴走事件こそが、後に彼女が独学でスケートボードに開眼する、すべての始まりであったことを……当時のビルダーマンはまだ知る由もなかった。)