テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
11,230
#veeronica
ゆ♨️
352
#azure
ゆ♨️
134
#擬人化注意
「ちょっと進捗見せなさいよ」
事前予告もなしに、開発室のドアがバタンと威勢よく開いた。
入ってきたのは、ピンク色の髪をなびかせたジェーンだった。
手に持った大型の作業用スパナを指先でクルクルと回しながら、鋭い目つきで室内に足を踏み入れ——そのまま、ピタリと動きを止めた。
開発室の中央、スポットライトが当たる作業台の前。
そこには、ビルダーマンがヴェロニカの前にかがみ込み、真剣そのものの表情で彼女の赤いフーディーの裾を整えている姿があった。
フードの形を細かく微調整し、胸元のジッパーの位置を数ミリ単位で調整すると、ビルダーマンは感無量といった様子で小さく頷いた。
「うん……やっぱり赤が映えるな。実に似合ってる……」
「Sir ビルダー、感謝シマス! 運動性も良好デス!( 〃 ⌒ ‿ ⌒ 〃 )」
ヴェロニカの画面には照れたような笑顔が浮かび、背中のコンセントケーブル(尾)が嬉しそうにパタパタと揺れている。
静まり返る開発室。
数秒の沈黙の後、ジェーンの額に青筋が浮かび上がった。
「チッ…あんた……ロボット着せ替え人形にしてんじゃないわよ!!!」
開発室の天井が揺れるほどの叫び声が響き渡った。
ジェーンは肩をいからせ、手に持ったスパナをビルダーマンへと突きつける。
「ヘルパーロボットのプロトタイプを作ってるはずでしょ!? なんで業務時間中に私服のコーディネートなんかでウットリしてんのよ! 納期がどんだけ迫ってるか分かってんの!?」
「じ、ジェーン! 誤解だ! これは単なる着せ替えではなく、伸縮性素材による駆動関節の保護テストであってだな——!」
「言い訳が見苦しい!!」
真っ赤になって弁明するビルダーマンに、ジェーンが容赦ないスパナの一撃をお見舞いしようと一歩踏み込んだ、その時だった。
ポン。
ジェーンの肩に、巨大で温かい手が優しく置かれた。
「まぁまぁ、ジェーン。落ち着きなよ」
いつの間にか後ろに立っていたのは、大柄な金髪の男——ジョン・ドウだった。
彼は穏やかな笑みを浮かべ、ジェーンの怒号をまるごと包み込むような優しい声で続けた。
「ビルダーが一生懸命作ったんだ。服を選んでやるくらい、愛情があっていいじゃないか。それに……君だって、新しい服を買ったときは少し浮かれていただろう?」
「っ!?」
ジョン・ドウの顔が、至近距離からジェーンを覗き込む。
あまりにも距離が近く、彼の大きな手から伝わる温もりと真っ直ぐな眼差しに、ジェーンは毒気を完全に抜かれてしまった。
「な……っ! じ、ジョン、あんた何言って……っ! 私の話は今関係ないでしょ!?」
さっきまで怒り狂っていたジェーンの顔が、真っ赤に染まった。
「ふふ、ジェーンは優しいな。いつもみんなのことを気にかけてくれてありがとう」
ジョン・ドウが爽やかに笑いながら彼女の頭をポンポンと撫でると、ジェーンは完全にキャパシティオーバーを起こし、言葉を詰まらせて明後日の方向を向いた。
「うぐぅ…っ、も……もういいわよ! 好きにしなさいバカ!!」
ジェーンは真っ赤な顔を隠すようにフイッと背を向けると、勢いよく開発室を飛び出していってしまった。
残されたビルダーマンは、胸をなでおろしながらボソッと呟いた。
「……助かったよ、ジョン」
「ハハハ、構わないさ。ジェーンも根は優しいからね」
ジョン・ドウが爽やかに去っていく背中を見送りながら、ヴェロニカは画面を「( ? _ ? )」と首をかしげるマークに変え、ビルダーマンの袖を引っ張った。
「Sir ビルダー、ジェーン様のお顔が赤くなっていたのは、内部サーモスタットの故障でしょうか?」
「いや……あれは人間の『照れ』という初期仕様だ。触れないでおいてあげよう……」
胸を撫でおろしつつ、ビルダーマンは再びヴェロニカのフードを整え、「やっぱり可愛いな」と密かに心の中で噛み締めるのだった。