テラーノベル
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施設の薄暗い廊下には子供達のざわめきと遠くで響く足音が交差していた
まだ幼かった彼
ぶるーくは、壁際に縮こまりながら震えていた
顔には痣があり、傷はまだ新しかった
「おいきょうもアイツをいじめてやろうぜ」
同じ施設にいる子供達の声が無情に響く
ぶるーくは怯えて身を固くする
その日、施設の中庭で、きりやんは遊んでいた
体は小さく、表情は真剣そのもの
幼いながらも彼は、正義感の塊だった
「やめろ!いじめるな!」
きりやんは走り寄り、ぶるーくを囲む数人の子供たちに声を荒げた
「よわいものいじめをするのはゆるさない」
彼の声は小さくとも揺るがなかった
驚いたように子供たちは散り散りに逃げ去り、ぶるーくはその場に倒れこんだ
きりやんはぶるーくの肩に手を置いた
「だいじょうぶか?」
ぶるーくは細い身体を震わせながら震える声で答えた
「………うん」
それから2人は少しずつ距離を縮めていった
きりやんは施設の中で誰かを助けたいと願う心の持ち主だった
ぶるーくはそんなきりやんの正義の話に耳を傾けきりやんを知っていくうちに、何かが芽生えていった
ある日、きりやんはが話した
「せいぎってさ、つよいひとがよわいひとをまもることだとおもうんだ」「よわいひともつよくなれるように」
ぶるーくはじっと聞いていた
そして、不意に口を開く
「きみのせいぎ……こわして……ぼくのものにしたいな…」
「…………?」
その言葉は幼いきりやんには意味がわからなかった
ただぶるーくの不気味な笑みだけが胸に残った
やがて、ぶるーくは施設を去ることになった
別れの日、ぶるーくはきりやんに小さな包みを手渡した
「…………たからもの」
包みの中には
羽のちぎれた黄色い羽の鳥の死骸があった
きりやんは驚き、戸惑いながらも、それを握りしめた
「また、あおうね…いや……ぜったいあいにいくから」
ぶるーくはそう言い残し、施設の向こうへ歩き去った
きりやんは最後までぶるーくの名を知らなかった
でもぶるーくはきりやんのことをずっと知っていた
月日は流れ、きりやんの胸にその記憶が蘇ることはなかった
だがいつかの夜、夢の中でぼんやりと施設の光景が蘇る
「嫌な夢を見た…………」
そう呟きながら薄れゆく今見た夢と共にきりやんは目を覚ます
これは2人が出会う予兆に過ぎない
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