テラーノベル
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「この数字を見てください、経費の60%が一部の人達によって使われていたの、その一部の人達は今朝の経営会議に集まっていた役員達よ、兄はあの人達をどうすることも出来なかった、しかも彼らは会社の売り上げが落ちても、先代の父が生きていた頃の高給のまま、ほとんど会社には貢献していなかったの」
「大変だったんだね」
ポツリと文也が同情の言葉をジェニに向けた
「ありがとう、とにかく詳しく説明するから、私にプレゼンテーションをさせて」
三人がお互い顔を見合わせた、竜馬が自分の机のボタンを何やら推した、するとカーテンが自動に閉まり、大きなスクリーンが壁に落ちて来た
「プロジェクターはそこにある、さっさと繋いで」
竜馬が素っ気なく言った、ジェニがノートPCの画面をスクリーンに映すと、三人がスクリーンの画面をじっと見つめる、レーザーポインターを握る手が震えた、ジェニは一枚目のスライドをずらして説明を始めた
「会社の経営内容と、今後の見通しがわかるデータよ」
「これは誰が作ったんだ」
竜馬が聞いた
「私よ」
「佐竹部長が作ったのじゃなくて?」
宗一郎が聞く、ジェニはぐるりと目を回した
「佐竹部長は表計算ソフトどころか、パソコンの電源がどこかもわからないはずよ、会社はコストがかかりすぎたり、経営管理が上手く行かないと悪化するわ、うちの会社はまさにその両方だったの」
「それは君のお兄さんに責任があるはずだ」
竜馬が言った、彼には自分を苛立たせる所がある、明らかにジェニの事を家族経営の甘い汁を吸っている役立たずと決めつけている、でもジェニは辛抱強く反論することなく、プレゼンを続けた
「それはもっともだけど、今うちの兄は見ての通りだから、今更誰を責めても仕方がないわ、問題はこれからどうするかよ、メビウスがとても優秀なのは知っているわ、でも私達も良い仕事をしてるの、力を合わせたらもっと良くなると思わない?」
「ねぇ、クライアントのリストだけど「鳳凰堂」の案件は?うちが君達と競って負けてるよね、女性用日焼け止め「ファンタスティック色白」のヤツ!大体的な広告キャンペーンになるはずだったのに、どうしてうちは負けたと思う?」
文也が好奇心満々の笑みを浮かべてジェニに聞いた、よかった、この人はなんだか話しやすい
「あなた達のプレゼンテーションは私も見させてもらったわ、とても素晴らしかったと思う」
ジェニが綺麗な弧の字型の片眉をくいっと上げた
「でも私達の方がもっとよかったの!」
ヒュー♪と文也が口笛を吹いた
「なんだその爪は?」
ジェニの自信に満ちた口調が勘に触ったのか、竜馬が今初めて気が付いたとでも言う様に言った、ジェニはマジマジと自分の爪を見つめ、おばけがバケて出てくる仕草をして竜馬に言った
「ジェルネイルよ!見たことない?会社勤めに軽薄だと思っているんでしょうけど、先方の希望を私達は身をもって示すために自分の体を使っているの、これは大手のマニキュア会社の案件を今実験している所で、昨今のネイル市場は―」
「実験でもなんでも我が社は派手なネイルは禁止だ!」
ジェニはため息をついて両手を広げた
「ねぇ・・・一度でいいから会社の規則を緩めてみるつもりはない?曲り成りにもここは日本を代表する総合商社なのでしょう?」
「会社の規則を変えたことは今まで一度も無い!」
ジェニがムッとして言う
「わかりました、落とします!とにかく私はオフィスの荷解きに戻ります、後のプレゼンはデータに目を通してもらえば分かるように作ってあるから、質問があったら呼んでください、なんでも答えます、だから私の社員を解雇しないって約束してください!!」
「経営内容を分析しないうちは、確約は出来ません」
宗一郎が答えた、ムカついたジェニは宗一郎にむかって「いーっだ」と口を目いっぱい引き延ばしてヘン顔をし、くるりと振り返って去って行った
面を食らった宗一郎は目を丸くしてその場に固まった、文也は腹を抱えてゲラゲラ笑った、そして一時間後、ジェニのプレゼンテーションを全て見終わった三人の疑問は、増える一方だった
「このデーターによると、過去三年間役員以外の昇給はほぼ全員無い、中にはあの神崎ジェニはじめ、数人の社員が給料をカットしているな、しかも社長の妹の彼女はこの二年間、最低賃金しか受け取っていないぞ」
宗一郎が不思議だといわんばかりにデータを見ている
「そんなはずはないだろう?兄の会社でここまで経営状況が悪化しているのに、何もせずに、のほほんとした給料取りだったのに」
竜馬はため息をついた
「でも、彼女そんな風に見えなかったよ?僕には社員を守ろうと必死に見えたけどな」
と文也
「問題はここだと思う、小さな広告代理店なのに、経費だけは大企業並みだ、そのほとんどが役員が使っている」
竜馬は宗一郎が叩き出すPCの精算経費管理の一覧表をじっと見ていた、驚いたことに神崎ジェニの言う通りだった、役員達が甘い汁を吸っていたのだ、新幹線のグリーン車、高級レストランでの接待費、何万とするワイン交際費に会議費に雑費、とんでもない贅沢の限りを尽くしていたようだ
「人員削減の対象は決まったな」
「ねぇ!こっち見てよ、クライアントリストがなかなかのものだよ」
文也が機嫌良く言った
「こんないいかげんな会社にうちが負けたと思ったら癪だな」
「どうやって勝てたんだろう?」
文也が首をひねる
「たしかに財務面、組織面では、めちゃくちゃだが企画クリエイティブ面では・・・これ見たか?」
「うん、僕も今ちょっと調べたんだけど、この案件、テレビCMはずっと後だったんだよ」
「WEB広告か、切り取り動画の先駆けを牛耳っている」
「しかも、人気のSNSクリエイター達を格安案件で面白おかしく使っている」
それから三人はジェニ達が手掛けた1~3分程度の動画広告を片っ端から検証しだした、それはインスタグラムから切り取り動画まで多岐に渡って
有名なSNSクリエイターを使った動画は、お洒落にかつ印象深く構成されていた
「うまいな」
宗一郎がボソッとつぶやく
「だろう?すっごくうまいよ!!」
文也が嬉しそうに言った
コメント
1件
ジェニの「いーっだ」の顔面ストレッチ、めっちゃツボでした。あれで一気に好きになった。経営データをバーンと突きつけて、しかも自分は最低賃金で働いてたって…強い。三人の評価が「企画力はめちゃくちゃ上手い」に変わっていくのも痛快でした。次どうなるのか気になります!
めあ
43
2,001
#ネタバレ注意
るあ
2,673
#イケメン
蒼乃 月
828