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#長編
結愛
329
#地雷系
#夏休み
トド村
44
ミィは1〜2回ほどえずき腹の中の酒を吐き出した後、青白い顔のまま便座にぐったりともたれ掛かる。俺がメルラブで会計を行っていた際に見た酒量的に、恐らく1回や2回吐き出した所で酒は抜けないだろう……。
「楽になった?」
ヨダレとゲロに塗れたミィの口の周りをハンドタオルで拭きながら尋ねると、ミィは力なく首を横に振る。
「全部吐いちゃえよ。」
「……やだ……吐くの……嫌……。」
力ない声で呟き、再び唇の端から頬にヨダレが伝う。
俺の経験則から言うと、えずいた後一度吐くまでは苦しいが、その後はそこまで苦しくはない。それに胃の中を空っぽにすれば少し楽になるはずだ。
逆に吐かずに我慢をすると二日酔いが酷くなり、明日、一日中苦しむことになる。
「吐かないと、ずっと辛いのが続くぞ。」
「……吐くの……嫌なの……。」
俺はため息を吐いて洗面所で手を洗う。
彼女の背中から左腕を回して抱えるように掌をお腹に当てる。そして、右手の指を彼女の唇に当てた。
「口を開けて。」
「……嫌……止めて……。」
俺が彼女の腹を下から持ち上げるように押すと、彼女は「んぷっ……」と空気の抜けるような音を唇の端から漏らし、頬を膨らませる。しかし、もどすことはどうしても嫌なようだ。
「俺に任せれば、多少は楽になるぞ。」
「責任……取れないでしょ……。」
確かに楽になるという保証はない……。だから責任を取ることは出来ないだろう。しかし俺の経験的には確実に楽になるはずだ。
「責任は取れないが、俺はミィちゃんのことを思って言っているんだ。なるべく苦しまないようにするから。」
彼女は俺に抱えられたまま振り返り、涙とヨダレ、そして鼻水でぐしゃぐしゃな顔のまま、俺のことを睨みつけた。
「最後まで責任を取れないのに、優しくしないで!」
突然の大きな声に驚いたが、ここまで来た以上、彼女を最後まで介抱しないわけにはいかないだろう。それに、今から俺が泊まる場所を確保するのは難しいし……。
「最後まで面倒を見てやるよ。全部俺に任せとけ。」
信じてもらえるように俺は満面の笑みを浮かべ、なるべく爽やかに、かつ優しい声で宣言をする。ミィは一瞬キョトンとしたかと思うと、先程まで青白くなっていた顔に少し赤みが差し俺から目を逸らす。
「じ……じゃあ……我慢する……。」
ミィは俺に抱えられたまま、再び便器に頭を突っ込んで口を開ける。俺は彼女の口に右手の中指と薬指を突っ込んだ。生暖かい彼女の口内を滑らせ喉奥まで指を入れ、柔らかな舌を押すと共に左手で彼女の腹を押した。
苦しそうにえづく声とともに、黄色い液体がミィの口から滝のように便器へと流れ落ちる。何度か繰り返し行うと、えずく声だけしか出なくなったため、ゆっくりと解放する。
顔中から出る全ての液体で濡れている彼女の顔をフェイスタオルで拭う。その後、俺は手を洗い、便器に寄りかかりぐったりとしているミィに肩を貸してベッドの上へと横向きに寝かせ、掛け布団をかけた。
洗面器をミィの顔の横に置き頭を撫でながら、
「よく頑張ったな。もし、またもどしそうになったら言えよ。」
と言うと、ミィは何か消え入るような声で話す。聞き取ることができずミィに顔を近づけると、かすかに聞き取ることができた……。
「薬……買ってきて……。」
スマホを取り出し時計を見ると、時刻は午前2:30を回った所……面倒を見てやるとは言ったけれど……。
断ろうと思いミィの顔を見ると、涙を浮かべ苦しそうにしている……。畜生……。そう思いながらも、部屋の鍵を持ってコートを羽織った。
◆◆◆◆
新宿とは便利な街で、スマホで24時間営業の薬局を検索するとすぐに表示された。それも複数店ある。「誰がこんな夜中に薬局なんて使うんだよ。」と一瞬思ったが、今のミィみたいな奴のためにあるのか……と納得してしまった。
一番近くの薬局へと急いで向かい、薬剤師さんと相談をしておすすめの薬をもらう。薬剤師さんも過酷な仕事だ……こんな深夜まで働かされて……。それと同時にシジミの味噌汁とミネラルウォーターをそれぞれ2つ購入し、急いでホテルへと戻った。
部屋に入るとミィは横向きのまま、静かに寝息を立ててぐっすりと眠っていた。
こいつめ……と心の中で思ったが、先程よりは少しだけ楽そうな横顔を見て、まあ良いか……と思いながらコートを脱ぎ、俺もソファーに横になった。
◆◆◆◆
朝、ポケットに入れたスマホのバイブで目を覚ます。時刻は朝の8:30を回った所。
ミィの様子を見るためにベッドへと近づいた所、もどしてはいないが物凄い量のヨダレを垂らしていた。恐らく本能的に、少しでもアルコールを体外に排出しようとしているのだろう。俺は起こさないように、そっとヨダレを拭き取ろうとハンドタオルを近づける。するとミィが目を覚ました。
ミィはむくりと起き上がったかと思うとボサボサの頭をそのままに、朦朧とする意識のまま辺りを見渡した。そして、俺と目が合った瞬間、目を見開いて掛け布団を手繰り寄せ胸元を隠す。
「最低! 酔った私をホテルに連れ込んで! 昨晩、私に何をしたの!」
俺は否定をする気力すら失せて、ハンドタオルをミィに投げ渡し取りあえずヨダレを拭くように促した。
コメント
3件
うわあ、このエピソードすごく重くて切なかった……。ミィちゃんの「最後まで責任取れないのに優しくしないで」ってセリフ、グサッときた。酔ってボロボロなのに、ちゃんと自分を守ろうとしてるところが痛いほど伝わってくる。それでも優しく介抱する主人公の姿が切なくて。最後の朝、記憶なくて「最低!」って怒るミィちゃんに、無理もないけど胸が苦しくなったよ……🌙✨