テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
Yori(『仮』活動停止中)
28
こと
632
おみず
44
その木のそばに、少女が住んでいた。名をユリエという。
ユリエは、誰よりも長くその木のそばにいた。
朝は水を汲み、昼は洗濯をし、夜は木の根元で星を見た。
村の大人たちは、彼女を少し遠巻きにしていた。
「守り木に近づきすぎると、呪われる」
そんな噂が、いつの間にか定着していたからだ。
ユリエ自身は、呪いなんて信じていなかった。
木はただ、黙ってそこにいるだけだ。
抱きしめることも、拒むこともしない。
ある日、旅人が村に来た。
名をカイと言った。
彼は村の境界で立ち止まり、あの木を見つめていた。
長い時間、動かなかった。
「何を見ているの?」
ユリエが声をかけると、彼は少し驚いた顔をした。
「……ここ、越えられない気がして」
ユリエは笑った。
「そんなことないよ。みんな普通に通る」
カイは首を振った。
「身体じゃない。心が」
その言葉に、ユリエは何も返せなかった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!