テラーノベル
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その木のそばに、少女が住んでいた。名をユリエという。
ユリエは、誰よりも長くその木のそばにいた。
朝は水を汲み、昼は洗濯をし、夜は木の根元で星を見た。
村の大人たちは、彼女を少し遠巻きにしていた。
「守り木に近づきすぎると、呪われる」
そんな噂が、いつの間にか定着していたからだ。
ユリエ自身は、呪いなんて信じていなかった。
木はただ、黙ってそこにいるだけだ。
抱きしめることも、拒むこともしない。
ある日、旅人が村に来た。
名をカイと言った。
彼は村の境界で立ち止まり、あの木を見つめていた。
長い時間、動かなかった。
「何を見ているの?」
ユリエが声をかけると、彼は少し驚いた顔をした。
「……ここ、越えられない気がして」
ユリエは笑った。
「そんなことないよ。みんな普通に通る」
カイは首を振った。
「身体じゃない。心が」
その言葉に、ユリエは何も返せなかった。
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