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宮舘Side
呪いなのかなんなのか、俺たちの体の変化はどんどん進行していった。尻尾はずっと重いし、耳も生えているから普通の帽子がかぶれない。周りには見えないことは分かっていても、オフに外出することも自然となくなっていった。 そんな夜だった。
気がつくと俺は見たことのある森の神社の前に立っていた。辺りを見ると、
❤️「あ、翔太」
💙「え?涼太じゃん」
少し離れたところに、角も何も生えていないいつもの翔太が立っていた。お互いに駆け寄って状況を確認する。
❤️「なんで翔太ここにいるの?ここ、夢の中じゃ……」
💙「それはこっちのセリフだよ、涼太もなんでいんの?」
❤️「もしかして、康二も……」
🧡「おぉ〜い、だてぇ、しょっぴぃ〜!」
言いかけたところで、遠くの方から俺たちを呼ぶ声が聞こえた。聞き馴染みのあるその方向を振り向くと、
🧡「何で2人もここおるん!俺だけやと思っとったわ」
❤️「ほらね……」
💙「やっぱ、康二もなんだな」
🧡「ふぇ?何がや?」
一度見たあの夢の中で、今度は3人一緒になってしまった。これは一体どういうことなんだろう……
ここにいる時は体に角やしっぽが生えてないことも含めて、状況について確認し合っていると。
🦊「突然のお呼び出しすみません」
鳥居の向こうから声がして、そこにキュウビ、鬼、天狗が現れた。
👹「説明が遅れてしまったこと、謝罪する」
👺「これから汝らに全てを伝えようと思う」
❤️「あ、あなたたちが……」
本物の妖怪を目の前にして、その覇気に言葉がうまく出てこない。普段あんなに凄い芸能人と話しているのに。
🦊「説明のため、皆さんの夢への接触を何度も試みたのですが、ヤツらの邪魔が入ってなかなか出来ず……」
💙「ヤツら?ヤツらってなんだよ」
👺「キュウビ、言葉が足りておらぬ」
👹「俺から説明しよう。まず第一に、貴様らの世界に危険が迫っている」
❤️「危険……?」
👺「うむ。我ら妖怪は今勢力が二分化しており、我らと敵対している勢力が汝らの世界征服を企んでおるのだ」
🦊「私たちは人間とは共存していくべきだと考えているので、征服なんてしたくありません。ですが……」
👹「敵対勢力は俺たちの妖力を奪い、十分な力を出せないようにしてきたのだ。そして俺らが力を出せないところを狙い、もうじき、奴らはお前らの世界を襲う」
💙「は?襲う?」
妖怪が、俺たちの世界を襲うって?そんな馬鹿げた話が……でも、現に今俺たちは妖怪と会っているわけで。
👺「そこで、だ」
天狗は翔太の問いに答えず、俺たちへの説明を続ける。
👺「汝らに協力してもらい、その勢力を退けたいのだ」
妖怪たちが言いたいことは分かる。俺たち人間の世界を守ろうとしてくれているらしい。でも……
🧡「俺らは今どうなっとるん?あと、どうしても俺らが協力せなあかんの?」
康二が質問してくれた。俺が気になったのもそこだ。必ず俺たちが協力しないといけないのだろうか。
🦊「あなた方には私たちの力の一部を渡し、現在は半妖となっています。妖力も使うことができますよ」
その言葉を聞いて、自然と自分の手を見つめる俺たち。今、俺は半分妖怪になっているのか……信じられない気持ちでいたところに、
💙「うおっ!」
🧡「しょった?!」
2人が驚いた声を出す。そっちを見ると、なんと翔太の手からアニメで見るような電気の球が作られているではないか。
❤️「翔太、それ……」
💙「……俺たち、本当に妖怪になってるみたいだぞ」
驚きつつも冷静に翔太は言い、作り出した電気球をスッと消した。どうやら、信じなければならないようだ。
👺「それと、どうして汝らなのかというと、汝らがアイドルであるからだ」
❤️「アイドル、だから……?」
👹「アイドルという仕事をしている人間は他の人間より一際輝いていて、その輝きは妖力ととても相性がいいのだ。俺たちの力を存分に扱える」
💙「だからって……」
翔太が小声でぼやく。確かに、その気持ちもわかるけど……
🧡「この世界を救うためには、俺たちやないとあかんねんな?」
🦊「ええ、そうです」
🧡「……そうか」
何か言おうとしてやめた康二にも、思うところがあるようだ。
👺「ただ一つ、注意点があってな。汝らが少しでも妖力を使ったその瞬間、汝らは完全に妖怪となり、人間でなくなる」
❤️「え……」
衝撃の言葉だった。俺たちが、人間じゃなくなる?なのに、この世界を救うために力を使って戦わないといけないの……?
💙「え、ちょ待って、さっき俺使ったんだけど……!!」
👹「大丈夫だ。ここはお前たちの世界じゃないから、どれだけ使っても問題ない」
💙「なんだ、よかった……」
ホッと胸を撫で下ろす翔太。俺もそれを聞いてホッとする。
🧡「使ってもいいんや!なら俺も……」
康二はクッと力を込めると、何もないところに向かって手を押し出す。すると、規模の小さい竜巻が現れた。
🧡「わ!ほんまに使えた!」
小さい竜巻は一直線に進み、十数メートル過ぎたところでフワリと消えた。それを見た俺も、せっかくだからと康二に背中を押されて妖力を使ってみた。
自分の手にグッと力を込めると、炎がぐるぐると渦巻き球体になっていく。翔太のと似たような球が出来上がった。
💙「すご、涼太は炎なんだ」
🧡「炎と、風と、雷か……あはっ、俺ら結構強いんちゃうん?」
👺「我らの力だからな、強くいてもらわないと困る」
康二の言葉に天狗がドヤ顔で返し、ハハハ、とその場の空気が少し和んだ。
少しの静寂の後、鬼が俺たちに改めて向き直った。
👹「頼む。お前たちの力じゃないと、お前たちの世界を救うことができないんだ」
人間じゃなくなるということは、この人生が終わるということ。自分たちの人生を賭けてまでも、妖怪と戦わないといけないのか。
俺たちはしばらく黙り込んだ。そう簡単に人生を終わらせたくない。
🧡「……俺は、ええよ」
最初に口を開き、答えを出したのは康二だった。
❤️「康二……!」
💙「……ほんとに?」
🧡「大好きなみんなを守るためやもん、俺は命捨ててもええよ」
そう言う康二の目は潤んでいて、今すぐにでも泣き出しそうだった。それでも瞳の奥が揺らぐことはなく、すでに俺と翔太よりも覚悟が出ているのだろうと悟った。
死にたくないし、戦いたくもない。それでも、妖怪のことを知ってしまった以上、俺ももう無視なんてできなかった。
俺が動くことで、みんなのいつも通りの生活を守ることができるのならば。
妖怪になっても、康二と翔太がいてくれるのならば。
❤️「……なら、俺も」
🧡「だて……!!」
💙「涼太、マジで?」
焦った様子の翔太。翔太はまだ、答えを出せていないみたい。
❤️「うん、ちょっと考えはしたけど、康二と同意見だよ。命を捨てても、みんなを守る」
俺はそう言い切り、まっすぐキュウビの方を見た。キュウビは少し嬉しそうに、でもそれでいて不安げな表情で俺を見つめ返していた。
👺「翔太。汝の考えはまた今度聞こう。そうすぐに覚悟を決めるのは難しかろう」
天狗はそう言って、キュウビと鬼をうながしてここから立ち去ろうと歩き出した。
翔太は俺と康二を順番に見つめて大きく息を吐くと、
💙「待って!!」
天狗たちに向かって、叫んだ。
💙「……死にたくなんてないけど、俺も、みんなに助けられてるから。こんなこと知っといて何もしないとか、無理だし」
🧡「しょった……!」
翔太の言葉に顔を輝かせる康二。
👺「……いいのだな?」
💙「おう。それに、涼太と康二がいてくれるなら、どうなっても大丈夫な、気がして……」
頬を赤らめながら、徐々に小さくなる声で言った翔太。その言葉を聞いて、やっぱり考えることは同じなんだなと感じる。
🧡「もー!何照れとんの!俺もおんなじこと考えとったで♡」
語尾にハートが付くような喋り方で翔太にくっつく康二。今回ばかりは、翔太はそこまで嫌そうにしなかった。
👹「……本当にありがとう。俺たちが次にお前たちと会えるのは、戦いの前夜だ」
❤️「前夜……」
🧡「ギリギリまで会えへんのやな」
🦊「私たちにも準備がありますので。前日になりましたら、またお声をかけに参りますね」
👺「汝らの世界を守るため、共に頑張ろう」
そう言って、妖怪たちは去っていった。
神社の前に残された俺たち。一斉にその場に崩れ落ちた。
💙「はぁぁ……覇気すごっ」
🧡「喋ってただけやのにしんどいな……」
❤️「ほんとにね……」
ゴロンと寝転んで空を見上げ、黙り込む。
俺たちは、自分たちの人生を変える大きな選択をしてしまった。
❤️「……俺たち、本当に妖怪になるのかな」
🧡「……多分、ほんまなんちゃう?」
💙「全部夢だったらよかったのにな」
俺は体を起こして、隣に並ぶ康二と翔太を見る。
❤️「……妖怪になっても、ずっと一緒にいようね、俺たち」
俺がしんみりとしているのが珍しいのか、2人は驚いた様子で俺を見つめ返す。そして笑って、
🧡「当然やん!」
💙「あとの6人が死んだら、一緒に出迎えようぜ」
交互にそう言ってくれた。
妖怪になんてなりたくなかったけど、一緒にいるメンバーがこの2人で良かったなと思った。