テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
第69話 〚守る輪が広がる〛(玲央視点)
相馬玲央(そうま れお)は、
基本的に“空気を見る側”だ。
前に出るより、
一歩引いて全体を見る。
だからこそ、
最近のクラスの変化にも、
自然と気づいていた。
(……増えてるな)
白雪澪の周り。
前は、橘海翔だけだった。
今は、違う。
えま、しおり、みさと。
昼休みも、放課後も、
必ず誰かがそばにいる。
(偶然じゃない)
あれは、
ちゃんと“意図してる動き”。
玲央は、嫌いじゃなかった。
昼休み。
廊下で海翔と並んで歩きながら、
玲央は何気なく言った。
「最近さ」
「ん?」
海翔が振り向く。
「澪、一人になる時間ほぼ無いな」
海翔は、一瞬だけ驚いて、
すぐに小さく笑った。
「……気づいてた?」
「そりゃ」
玲央は肩をすくめる。
「俺、そういうの見る係だし」
少し沈黙。
「助かってる」
海翔は、素直に言った。
「正直」
玲央は、横目で友達を見る。
(お前がそんな顔するとはな)
放課後。
校門付近。
澪たちが歩いていくのを、
玲央は少し離れた場所から見ていた。
笑っている。
自然な顔。
でも。
視線の端で、
恒一の存在に気づく。
遠い。
でも、確実に、見ている。
(……なるほど)
玲央は、スマホを操作するふりをして、
立ち位置を変えた。
澪たちと、
恒一の間に入る位置。
(直接止める必要はない)
(“見られてる”って分かればいい)
恒一の視線が、
一瞬だけ揺れた。
(効いたな)
玲央は、内心で息をつく。
その夜、
海翔からメッセージが来た。
『今日、ありがとな』
短い。
でも、重い。
玲央は、
すぐには返さなかった。
代わりに、
一言だけ送る。
『一人でやるな』
既読がつくまで、
数秒。
『分かってる』
その返事を見て、
玲央は少しだけ安心した。
(もう、輪はできてる)
海翔。
澪。
三人の友達。
そして、
自分。
誰か一人が倒れても、
支えられる数。
(これなら)
(簡単には、崩れない)
翌日。
教室。
玲央は、
澪と目が合った。
澪は、
小さく会釈する。
それだけで、
十分だった。
(守るって、前に立つことだけじゃない)
(見てるやつが、見てる)
玲央は、
静かにそう思った。
そして気づく。
――“守る輪”は、
もう、クラスの一部になり始めている。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!