テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第70話 〚予知より早く〛(澪視点)
最近、
頭が痛くならない。
前なら、
何かが起こる前に、
必ず“あの感覚”が来ていたのに。
(……来ない)
澪は、教室の窓際で、
ぼんやり外を見ていた。
予知がない。
でも、不安がないわけじゃない。
――ただ。
(違う)
前とは、違う。
昼休み。
席を立とうとした瞬間、
澪は足を止めた。
教室の後ろ。
恒一が、立ち上がるのが見えた。
(……来る?)
一瞬、身構える。
でも。
「澪ー!」
えまの声。
「次、移動教室だよ」
しおりが言う。
「早く行こ」
みさとが、自然に腕を引いた。
三人に囲まれて、
澪は教室を出る。
廊下を歩きながら、
ふと気づく。
――恒一は、
何もできずに立ち止まっていた。
(……あ)
胸の奥で、
小さく何かがほどける。
(予知じゃない)
(“今”見て、判断した)
それが、初めてだった。
放課後。
海翔と並んで歩く。
「今日さ」
澪は、少し迷ってから言った。
「……頭、痛くならなかった」
海翔は、足を止めた。
「それって」
「うん」
澪は、ゆっくり頷く。
「予知、来てない」
海翔は、少し考えてから、
静かに言った。
「でも、ちゃんと避けられたな」
その言葉に、
澪は目を見開いた。
(……そうだ)
怖いと思った瞬間に、
止まれた。
周りを見て、
頼れた。
一人じゃなかった。
「私」
澪は、小さく笑った。
「前より、強いかも」
海翔も、笑う。
「知ってた」
夕焼けが、
二人の影を長く伸ばす。
澪は思う。
――予知は、
未来を教えてくれた。
でも今は。
(“今”を見て)
(選べる)
(動ける)
それは、
誰かがそばにいてくれるから。
えま。
しおり。
みさと。
玲央。
海翔。
守られている、
だけじゃない。
(私も、守る側に立ってる)
胸の奥で、
静かな自信が芽生えた。
その夜。
澪は、布団に入って目を閉じる。
――何も、見えない。
でも、不安はなかった。
(予知より早く)
(大丈夫って、分かる)
それが、
一番の変化だった。