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放課後。
雪乃は一人で再び森にやってきた。
中に入れないから外から見守るしかないが、それでも来るしかなかった。
昨日のオタチのように怪我をしてしまうポケモンもいるかもしれない。
そうなった時にすぐ駆けつけられるようにと、入口近くで待機していた。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
そんな時、森の中から悲鳴が聞こえてきた。
雪乃は躊躇わず、森の中へと走った。
悲鳴が聞こえた方へ向かうと、そこにいたのは…。
「た、助けて〜!!」
ベロリンガの舌にグルグルに巻き付かれた瀬戸がいた。
「………」
「あ!草凪さんちょうど良いところに!!ベロリンガに巻き付かれて動けないんだ、助けてくれないかな!?」
「…楽しそうだね」
「いや、違うから!遊んでるわけじゃないんだ!!ぐ、ぐるじぃぃぃぃ!!!」
なんだか苦しそうだから助けてあげることにした。
「あ、ありがとう…危うくここで息絶えるところだったよ」
「何してるの。入っちゃダメなんでしょ」
汗を拭きながら呼吸を整える瀬戸が、「あぁ」と答える。
「昨日のオタチを探してて」
「…オタチ?」
「そう。もしかしたら犯人を見てるかもしれないし、話を聞こうと思って」
話を聞く?
何を言ってるんだこいつ。
「…だから、どうして一人で森に入ったの。危険なのに」
「うん、でも昨日怪我をしたオタチを見て、早く解決してあげたいと思ったんだ。キミが言ってたように、このままじゃ埒が明かないと思って。それに…」
瀬戸は笑って雪乃を見る。
「キミが来てくれるって信じてたから、大丈夫かなって」
……こいつ。
雪乃は信じられないものを見る目で瀬戸を見る。
人畜無害そうな顔して凄いこと言ってるぞ。
私が来なかったらどうするつもりだったんだ。
「…馬鹿じゃないの」
「あはは…。でも来てくれたし、良かったってことで」
瀬戸はベトベトになった体を見て困った顔をしながらそう言う。
…到底理解できない。同じ生き物だと思えない。
私がおかしいんだろうか。
「よし、草凪さん、手伝ってくれないかな。僕一人だとまた襲われるかもしれないから、一緒に来てほしいんだ」
「…いいの?」
何が?と瀬戸が首を傾げる。
「あんな酷いこと言った人間と一緒に行動できるの」
「え?あぁ、全然気にしてないよ、大丈夫。僕も余計なお世話だったかなって反省してる。ごめんね?」
「………」
「あ、キミが嫌なら全然僕一人で行くから大丈夫だよ」
…もうずっとこいつのペースだ。
雪乃は何だか馬鹿らしくなってきて、ため息をついた。
「…わかった、一緒に行く。死なれても困るし」
「ありがとう。頼もしいよ」
「…けど、一つだけ」
にこりと笑う瀬戸に、雪乃は続けて言う。
「…怒られる時は、一緒でいいから」
庇おうなんてしなくていい。
自分だけで責任を取ろうとしなくていい。
雪乃の言葉に一瞬驚いた後、嬉しそうに微笑む瀬戸。
「うん。そうだね」
じゃあ行こっか、と歩き出す瀬戸の後をついて行く。
森は相変わらず、異様な静けさで包まれていた。