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LAST

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「見なよ、春美。これが適齢期に結婚出来てた子の現実。32って普通こんなだよ」
画面の向こうでは小さな子がわちゃわちゃと過ごしているのが見えた。ああ、そうだ、それはそうなんだと納得する。仁香がため息を吐いた。
「別にね、春美が結婚は急がない、もしくは結婚はしないっていうなら止めないよ。けど、結婚したいんでしょう? 出来れば子供も欲しい。そんな時に何してるのって思っちゃう。ねぇ、その恋って結婚に繋がるの? 私なら今から出会う人は直結がいいんだけど」
ガァンと頭をハンマーで殴られたような気持ちだ。そして、私は七瀬くんとの関係に少し浮かれていたことに気が付いた。
「まぁ、まぁ、仁香。向こうは大学生ったって大人なんだから何も悪いことをしてるわけじゃないでしょ。しかも結婚してもいいって言ってくれてるんでしょ」
「学生の『結婚』なんて幼い口約束みたいなもんでしょ。現実味が無いよ、21で結婚なんて」
「あー、でも向こうはバツイチ、1回結婚したことあるんでしょ」
「さらに悪いよ。安易に結婚出来る子ってことでしょ。人生のパートナーを重く考えてない。年齢を差し引いても事故物件」
「今、恋人も恋人候補もいないなら付き合ってみてもいいんじゃない?って思うけど」
「あのね、春美はすぐにでも結婚したいんだよ。見目のいい男が無駄に耳優しいこと言うんだから他見られなくなっちゃうでしょ。婚期逃すよ! それが沼の怖い所でしょ。年だけはどんどんとるんだから」
「推しつくるようなもんじゃん」
「だからー。それが方向性間違うって! 」
私は二人がやいやい言うのをぼんやり聞いていた。
私は二人にどう言って欲しかったんだろう、と――。
そうだ、私は結婚がしたくて、目指すのは希美がいる場所。
『私も子育てひと段落したら推しつくりたいな……』
画面の向こう、一瞬マイクをオンして希美がそう言った。
希美は少し話すとまた画面の向こうに戻ってしまい、結局そのままビデオ通話は切れてしまった。
大変そうなのに幸せそうに見えて、羨ましい。
「いいなぁ、希美。将来に不安とかないんだろうなー」
仁香も私と同じことを思ってた。
「ね、羨ましい」
「そうだね。私も婚活あんまりうまく言ってなくて、ほんと相手探しって難しいよ。生涯未婚率は年々増えて、2030年には男性の3人に1人、女性の4人に1人が生涯未婚者になるって予測が出てるんだって。なんかさ、もう不安でいっぱい。もう少し若かったら、春美のことも羨ましいって思えたかもしれないけど、この状況でさ呑気な事言ってるから、現実見て欲しくてきつい言い方になっちゃった」
「まぁさ、なるようにしかならないし、好きになれる人も貴重だし。春美の人生、春美が決めることだから私は反対はしないよ。変な方向に暴走し始めたら止めるけど」
「ん。ありがとう、ちょっと目が覚めたっていうか。これが現実だよなって、私の年のリアル」
「うん。そうだね、囚われる必要は無いけど。でもさ、婚活の結果も大事だけど、やっぱ結婚って好きな人と、恋愛の延長にあるのがベストだと思うよ。本当に無理なら春美だってバッサリ距離取ってるはずなんだから。結局、気持ちがブレーキかけちゃってんの」
「甘いよ、甘い。婚活にはもっと本気で挑まなきゃ。時間は待ってくれない。年取るごとに難しくなるんだから。やるだけやって頑張って結果が出ないのはしょうがないけど、後悔したくないでしょ」
「仁香はもう婚活長いから荒んでるのよ」
「ほんと、心折れるよ、婚活」
「なるほど、早い方が良いのは私もわかる」
「年下いいじゃんね。色々これからだし、体力あるし」
昌代は肯定的に私のことを口にした。
「少し下くらいならね。若すぎるよ、遊びたい盛りでしょ。支えた時代忘れて若い相手に乗り換えられる可能性ある」
「あー、こっちがどんどん老いるのに向こうは男盛りになるわけか。そうじゃない人もいるだろうけどね」
今はいい、けど……結婚とは先を考えることだから……。
そうだよね。
困っている、なんて思いながらどこかで浮かれていたのだと思い知らされた。それから、32歳の現実と。
結婚して、子供がいて、2人目の子どももいて。家庭を築いて、仕事ではキャリアを築いて……。
「学生は学生と恋愛しといたらいいんだよ」
仁香の言葉がしっくりする。そう、街で見かけたあの子は学生らしく、横にいた女の子もとてもかわいかった。あれがあの子の居場所。私は何とも言えない気持ちで二人とのランチを終えた。
「結局、沼ってるなら付き合ってみるのもありだと思うよ、私は。遠回りかもしれないけど、そうしないと踏ん切りつかないこともあるし」
『なんだかんだ言って、俺を引き離せないの知ってますからね』
あの子、ああ言ったけどここ数週間は音沙汰がない。
『結婚したいって言うけど相手ってそう簡単には見つからないだろ。だから、フリーなうちは俺とも遊んでよ』
俺とも遊んでっていうくらいだからやっぱり、気まぐれ、暇つぶしみたいなものだったんだろうな。たまには畑違いの女と遊んで見たくなったんだろうか。私が声をかけたことでそんな興味が出たのかもしれない。
――忘れよう。
何もなかったんだから。
あの子に告白する前のモチベーションを思い出して……。早く私から離れて欲しいと思いながらも、自分へ向けられる好奇心の類の感情さえ優越感を感じていたのかな。
はぁ、何をやってるんだろう。
私の横をお似合いのカップルが楽しそうに通り過ぎていく。
お似合いの大前提は、同世代ってことだ。
頭ではとっくにわかっていることだというのに。
コメント
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うわ、めっちゃリアルな会話……刺さるわこれ。仁香の「婚期逃すよ」って言葉、厳しいけど正論すぎてぐうの音も出ない。でも昌代の「恋愛の延長がベスト」ってのもわかるし、春美のモヤモヤがすごく伝わってきた。年下彼氏の「俺とも遊んでよ」に現実突きつけられて、でも忘れようとする切なさ……。32歳のリアルと向き合う姿、感情移入せずにいられなかった。続き気になる!