テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
遊園地のお化け屋敷の前で、赤葦京治は落ち着いた表情のまま、🌸を見つめた。
「そんなに心配そうな顔しなくても大丈夫ですよ。
僕がいますから、安心してください」
いつも通り穏やかで誠実な声。
頼りになる彼の態度に、🌸は自然と笑顔になる。
しかし——
赤葦の指先だけが、わずかに緊張していることを
彼女は気づかなかった。
そして中に入り、扉が静かに閉まった瞬間。
──ドンッ!
唐突に鳴った衝撃音に、
赤葦の肩がピクッと跳ねた。
「……っ、思ったより……音が大きいですね」
冷静を保とうとしているが、
声の端が少し震えている。
(けいちゃん……もしかして怖いの苦手……?)
進むと、薄暗い通路から人影がふっと横切った。
「……っ!」
赤葦は反射的に🌸の手首を掴んだ。
普段より握る力が強い。
「すみません……ちょっと驚きました。
あなたは、大丈夫ですか?」
自分が怖いのに、まず彼女を気遣う。
そこが赤葦らしかった。
しかしその直後、
頭上から布がサッと落ちてくると——
「……!?」
赤葦は完全に動きを止め、
無言のまま🌸の背中にそっと隠れる。
「……ごめんなさい。
少し、あなたの後ろの方が安心できるみたいです」
(かわいい……)
普段冷静なのに、こういう時だけ子どもみたいになるのが
彼のギャップだった。
暗闇を進む間、
赤葦はずっと彼女の服の裾をつまみながら歩く。
「けいちゃん、離れちゃう?」
「離れません。……離れたら僕が困るので」
弱い本音をさらりと漏らす赤葦に、
🌸の胸がきゅっと温かくなる。
ようやく出口の光が見えると、
赤葦は深呼吸して姿勢を整えた。
そして外に出ると、
さっきまでの怯えた姿が嘘のように、
いつもの冷静な表情に戻る。
「ふぅ……お疲れさま。
……さっきのことは忘れてくれると嬉しいです」
恥ずかしそうに視線を外す赤葦。
でも次の瞬間、ふっと優しく微笑む。
「あなたが隣にいてくれたから、頑張れました。
ありがとう。……本当に、頼りになりますね」
そう言って、
彼は自然に🌸の頭を優しく撫でた。
「この後は、僕がちゃんとエスコートします。
彼氏ですからね。……手、繋ご。」
さっきまで怖がっていたくせに、
急に余裕を取り戻してくるところが、
まさに赤葦京治だった。