テラーノベル
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遊園地のお化け屋敷の前。及川徹はいつもの“余裕の笑顔”を浮かべていた。
「ねぇねぇ🌸、怖かったら俺にしがみついていいからね?
俺、頼りになる彼氏だから〜!」
軽口を叩きながらも、
彼の耳がほんの少し赤くなっていることを🌸は知っていた。
(ほんとはちょっと怖いのに、強がってるやつだ…)
中に入ると、薄暗い通路と重い空気が流れ込む。
──ゴトッ。
突然足元で何かが転がる音がした瞬間。
「っ……!? ちょ、ちょっと待って…今の何!?」
声が裏返った。
余裕は、一瞬で消えた。
「透、大丈夫?」
🌸が小声で聞くと、
「だいじょぶっ! 全然だいじょぶっ……!!
お、俺が守っちゃうし……!」
明らかに震えている。
言葉の端がどんどん高くなっていく。
さらに、一歩進んだところで
暗闇の向こうから影が“ふわっ”と揺れた。
「ひっ……!?」
透は反射的に🌸の手を掴んだ。
いや、掴むというより“抱きつく勢い”で寄ってくる。
「ちょ、ちょっと透、近い」
「だって怖いんだもん!!」
情けない声で叫んでしまい、
自分で言った瞬間に顔が真っ赤になる。
「……違う! 今のは反射反射!!
こ、怖くなんてないし?!」
負けず嫌い特有の必死の言い訳。
でもその直後、
頭上から布がヒュッと落ちてくると——
「ぅわああっっ!!?」
透は完全に🌸の背中に隠れた。
肩がぷるぷる震えている。
「透、私の後ろにいるの珍しいね」
🌸が小さく笑うと、
「う、うるさいぃ……!
もうちょっとだけ後ろにいさせて……!!
頼むから置いていかないでぇ〜……!」
普段のキラキラ王子様キャラはどこへやら。
完全に犬系彼氏が怯えてる姿だった。
出口が見えてきた途端、
透は急にスッと姿勢を整えた。
「……ふっ。クリアしたね。
まぁ? 透くん的には? 全然余裕だったけど?」
「さっきの悲鳴、かわいかったよ」
「やめて!? 忘れて!? 俺のプライドが死ぬから!!」
両手で顔を隠しながら大慌て。
でも次の瞬間、照れ隠しのようにふっと優しく笑う。
「でも……🌸が手握ってくれてたの、嬉しかったよ。
離されたら俺泣いてたかも」
そう言って、
彼女の頭にぽん、と優しく手を置く。
「次は、絶対男らしいとこ見せるから。
ほら、おいで? 俺についてきて♡」
調子よくしながら、
でも彼女の手をそっと離さない透だった。
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及川さんかわいッ