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「ハハ……ごめん」
名前を間違えてごめん。有夏の部屋のあまりの汚さにキレて、勢いで捨てちゃってごめん──二重の意味である。
有夏は怒りの矛先を見失ったか、ふくれっ面のままその場に座り込んだ。
「あーあー、そんな話してたらホントに読みたくなってきたしぃ」
ちらりと幾ヶ瀬を見上げると、心なしか顔色が悪い。
「だ、駄目だよ? こないだブリーチ全巻買ったんだから。74冊ってびっくりしたよ。3万ちょっとしたんだからね」
「有夏、持ってたんだけどなぁ。すごい好きで何回も読んだなぁ。中学ん時からこづかい貯めてちょっとずつ買ってさ。有夏のこづかい、いくらだったか知ってるよな」
「た、たしか月500円?」
「高3の時はな。中学ん時は月200円だったからな」
「う……」
「もう一回読みたいなぁ。もっかい買いたいなぁ。せめてネカフェ行って読もうかなー、ああ……ムリだった」
100%脅しである。
有夏にしては回りくどい言い方だ。今回の件では自分には全く非がないと分かっているが故の余裕の表れか。
「分かったよ!」
案の定、幾ヶ瀬が折れた。
有夏の腕をつかんで立ち上がらせると、顔を突き合わせるようにして宣言する。
「分かったよ、有夏! 鋼の錬金術師、全27巻! 買ってあげるから」
「ちゃんと巻数まで覚えてるし」
有夏が俯く。
ニヤニヤを隠す為なのは明らかだ。
「その代わり……」
幾ヶ瀬が唾を呑み込む。
声のトーンが変わったからか、有夏は半笑いのまま顔をあげた。
その頬を幾ヶ瀬の両手が包む。
有夏が何か言うより先に唇は塞がれ、舌が口腔内を蹂躙した。
久しぶりの口づけは数分間に及んだろうか。
ようやく顔を離した2人の呼吸は荒く、唇はまたすぐに求め合う。
「はぁっ……ん、せっ……」
幾ヶ瀬の手が有夏の腕を、背を、撫でおろす。
「全部買ってあげるから……ね、いいよね、有夏」
「う……、それってまた? イクセさんのやつ?」
幾ヶ瀬の笑い声が微かに。
有夏は例の娼館の遊びを思いだしたのだろう。
たしかに今の台詞はそれっぽかったと小さく呟く。
「それはまた今度にしよ」
「ん……」
「今は有夏のナカ、かき回したい……」
有夏が呻くような声をあげたのは、幾ヶ瀬の手が彼の腿を捕えたからだ。
彼の背に密着するようにして立つと、太ももに指先をすべらせて短パンの裾をまくりあげる。
尻の辺りまでいくと中に手を滑り込ませ、下着をずらせた。
「ちょ、幾ヶ瀬、ここで?」
返事がないのは余裕が無かったためだろう。
自身も腰のタオルをはだけると、既に白濁液が溢れる先端を、有夏のソコにあてがう。
「いくせ……?」
「有か、も……俺っ」
いつもなら、せめてその汁だけでも有夏に塗りこんで指でほぐしてやるところなのだが。
「ごめ、有夏……」
圧し当てたそれを、腰を使って押し込みながら、強引に有夏の尻を割り開く。
「んあっ……やぁぁ……」
「あり、か……我慢して」
腰を小刻みに前後に揺すって、徐々に奥へと侵入していく。