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祖国は一体、何処へ向かうのだろう。
多民族を否定し、自由を求める自国民を縛り、隣国には喧嘩を売って。
そんなろくでもないことばかりをして、この先一体、 どんな道を辿るのだろう。
「それだったら、僕の祖国だってそうだよ」
隣でイヴァンが言った。
「無意味な侵略を始めて、西側と対立してさ……そろそろ核を落とすんじゃないかって思うと……」
「核を落とすほど、てめぇの国は馬鹿じゃねぇ筈ある。損失のほうがでけぇあるからな」
「分からないよ。人間なんてそもそも、ケダモノ以上に何をしでかすか分からない、そんな生き物じゃないか。権力を握った奴なら、尚更」
「…………」
我の祖国も、イヴァンの祖国も、社会主義とは名ばかりの独裁国家だ。何処までも不自由で、時に暴力的な、そんな国々だ。
それでも、そんな国で生まれ育った事実を、我もイヴァンも、無かったことにすることは出来ない。しかし、国が重ねた罪を贖う術も無い。
何も出来ない。否、何をやっても解決しないのだ。 我の国でもイヴァンの国でも、権力を持たぬ国民は、 政府の前では幾ら集まっても非力だから。
「僕達、これからどんな顔して、どう生きようか」
「…………さぁ」
「少なくとも僕は…………神様の前で、卑屈に生きたいな。毎日『生まれてきて、生きていてごめんなさい」って、必ず言うんだよ」
「…………そうあるか」
好きにするよろし、と続けたかったが、イヴァンの昏い笑顔を前に、結局言えなかった。