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「杏葉(あずは)ちゃん、待って!」
体育館から走ってきた杏葉は、 弥奈(やな)の声で足を止める。
気が付けば、そこは屋上の前だった。
外は雨だというのに、なにも考えずに走ってきたからだ。
「私のせいで、空太(くうた)も宗次郎(そうじろう)も傷つけた」
弥奈に背を向けたまま、杏葉は口を開く。
「私がいなければ、空太も殴られなかったし、宗次郎も殴らなかった。私がいなければ」
「杏葉ちゃん!」
ギュッと強く、背中から抱きしめられた。
強いのに、とても優しい。
こんな温もりを、杏葉は久しく感じていなかった。
恋愛*スクランブル
第91話 なによりも
「落ち着いた?」
「うん。ありがとう」
杏葉と弥奈は、階段に並んで座っている。
「藤堂(とうどう)宗次郎、許すまじだよ!! 空太くんにあんなことするなんて!!」
「私のせいだよ*******************
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