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夏の片想い
【赫視点】
夏の夕方。外はまだ明るくて、蒸し暑い。そんな時に、俺は先輩と2人で変わらない町を歩いて帰るのが好き。
赫「….先輩」
黑「ん、?」
先輩の髪は、所謂ウルフカット、と呼ばれるもので、襟足が長い。だから先輩は、襟足を髪ゴムで結んでいる。
赫「最近、暑すぎません、?」
黑「….うん、そうだな、笑」
じんわり汗ばむ肌。この暑さが、嫌に俺の心を乱す。
黑「夏ってさ、暑いし嫌じゃん」
赫「そうですね」
黑「でもさ、夏ってすっごい青春じゃない?」
赫「どういうこと、ですか?」
俺の横で、太陽よりも眩しい笑顔で話す先輩は、2つ年上だなんて思わないくらい、可愛げがあった。
黑「こうやってゆあんくんと話してる今もさ」
赫「はい、」
黑「きっと学生時代しか過ごせないじゃん」
赫「….そうですね」
黑「俺にとっては、これが学生最後の夏だし」
赫「先輩、大学…行かないんですよね」
黑「うん。ゆあんくんは?」
赫「俺はまだ…よくわかんないです、」
たった2つの年齢差なのに、俺よりずっと大人で、賢くて、かっこよくて、可愛くて。
黑「まぁ、あと2年以上あるからさ。ゆっくり考えると良いよ」
赫「…..俺」
黑「うん、」
赫「先輩と、もっと、沢山話したり、遊んだり、1年じゃ足りません、!」
黑「なにそれ笑」
赫「俺、先輩のこと、ほんとに大好きで、」
夏の暑さで、自分が何を言っているかは、よく分からない。それでも、今言いたいのは、
赫「もっと沢山、先輩と居たいです、」
黑「なんか、告白みたいじゃん笑」
赫「いや….、」
黑「まだ7月。あと8ヶ月も一緒に居れるよ」
赫「………そう、ですよね」
伝わらない片想い。あと8ヶ月で、先輩の心を動かすことなんて、できるのだろうか。
少し立ち止まって、先輩の後ろ姿を見詰める。俺よりほんの少しだけ低い背。右耳に開けられた3つのピアス。太陽の光の反射で輝く薄茶色の髪の毛。俺の、大好きな先輩。
赫「うり、好きだよ….」
小さく呟いた俺のひと言は、蝉の鳴き声にかき消され、誰にも届くことはなかった。