テラーノベル
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「今日はなんて良い日なんだ!」
真夏の中、1人の少年が誰もいない田舎の河川敷の橋の上で叫んでいる。
「雲ひとつない空、暖かな日光、心地よい風、ああ……なんて最高な日なんだ!こんな日に人生の幕を閉じれるなんて! 」
時刻はちょうど13時、橋の上で意気揚々にワルツを踊るかのごとく動き、たからかに静かな河川敷で語る少年。
「さてさて……」
語りすぎて満足したのか少年は橋の手すりにまたがりゆっくりと立ち上がり両手を広げ目を瞑り
「あーあ結局なれなかったなぁ……憧れのあの人に……」
そう言うと少年は徐々に前に傾いていく…
「少年、幕を下ろすのはまだ早かろう。」
「!?」
後ろを振り向くとそこには白黒のスニーカーを履き、老人の着るようなカーディガンやスボン、青のハンチングを被り、右手には杖、左手にはトランクを持った小太りの男性が佇んでいる。
見た目は大学生…または高校生だろうか?だが発する声にはなぜかどっしりとしていて、初老の人を彷彿とさせる。見た目の割には異様に違和感を感じるファッションである。
「ど、どっから来た!?この時間帯は誰も居ないはずだ! 」
少年は顔を赤らめて激しく動揺し出す。
「うーん🤔確か…《今日は最高の日だ!》っていう所から見てたよ。後ろにいたのだけれど、やはり私は影が薄いらしいな。トホホ……」
すごく落ち込んでいる。例えるなら「受験で志望校に落ちた学生」くらいだ。
「……誰にも見られずに逝きたかったのに…クッソォォォォ!」
少年は悔しそうに、勢いをつけて頭から落ちるように飛び降りた。そしてゆっくりと目を閉じ…..
「だから…これで2度目だぞ少年!まだ幕を下ろすのはまだまだ早かろうて。」
目を開けるとそこは橋の上…しかも膝枕!?
「うわぁぁ!!」少年は驚きの声を上げ勢いよく起き上がり、尻もちをついたまま橋の手すりまで後ずさる。男の姿はなぜか最初と変わっていた。熟年の紳士が持つような黒いステッキを持ち、洋画に出てきそうな黒く光るシルクハットを被り、礼服を纏っている。少年は突然のことと目的を果たせなかったことで目に涙が浮かび、
「なんで……なんで!どうやって!」
地面を何度も叩き泣き出す少年。
「そんなに泣くな少年。生きることが何よりも素晴らしいことをこれから教えてあげよう。 」
そういうと男は陽気に持っている杖を回しながら
「まずは自己紹介から、
私の名前は相良 司(さがら つかさ)
君のような人生に諦めた人材を集めて旅館を営んでいる。ぜひ君も私の旅館で働いて欲しいのだよ! 」
と言う。
男はポケットから取り出したハンカチで少年の涙拭い、心を落ち着かせるため背中を擦りながら少年にトランクから出した麦茶を差し出す。普通であれば真夏なのでトランクの中に入れていた麦茶は冷たくは無いはずなのだが、その麦茶は不思議とキンキンに冷えていた。
少年は少し落ち着き、疑い深く貰った麦茶とにこやかに笑っている男を凝視し決心が着いたのかまたは喉が乾いたのか少年は麦茶を飲んだ。炎天下に飲む麦茶はとても美味しく、それでいて川のせせらぎや蝉の声、心地よい風が少年の不安定な心をなごませていく。
「落ち着いたか?少年!」
「は、はい。…とりあえずは落ち着きましたけども、話が急すぎてよく分からなかったのですが……僕を雇いたいと仰っていて、そしてあなたの名前は《相良 司さん》と言う。で良いんです…よね? 」
「ほぼ理解しているではないか。いいぞ少年!
やはり若いものは覚えも、耳も良いようだな!」
と男は腕を組み「うんうん」と頷く。
「少年っていうのはやめてください!僕にもれっきとした名前があります。」
「おお!そうだった、名前はなんて言うのかね?」
「不審者に教える義理はないですが……何されるか分からないので……言います。少年は体育座りをしつつ顔を隠しながらも話した。
僕の名前は**深見 智也 (ふかみ ともや)**
と言います。最近中学を卒業したばかりです。」
「なぜ自殺を?なぜその若さで?親は?友達は?」
とても不思議そうに、うざったく聞いてくる男。
少年はその質問に対して何も答えまいと、顔を隠し続ける。その様子を見た男は、
「あっ!そうかそうか!いやいや失敬失敬!こりゃとんでもない!いつもの癖でな!深堀をしないと気が済まなくてねぇ、さすがにこんな炎天下で長話は熱中症のもとだよなぁ。クーラーの効いた涼しい部屋でアイスでも食べようか!」
そういうと男は体育座りしている少年の手を掴んで、「え?え?な、何するんですか!?」
と少年は戸惑う
男は少年の手を掴みながら橋の手すりまで急に走り出す。そして、
「さぁ行こうか少年!俗に言うアイスブレイクだ!」
そして男と少年は橋の上から飛び降りた。
「だから少年って言うなぁぁぁ!」
少年は、こんな死に方したくない!と心の中で叫びながら涙を流し橋の影に男と身を投げた……
少年は目を閉じた……
何か…音楽が聞こえる…
「 ♪♪…Sweet dreams are made of this Who am I to disagree?…… 」
これは海外の曲だろうか、不思議と惹き付けられる。
「って死んだ!?」
少年は飛び起きた、辺りを見回すとそこは1つのランプが机を照らす暗い部屋のベッドの上にいた。
カチ カチ カチッ ボーン… ボーン… ボーン…
時計の針は夜の9時を指していた。
「夜の9時!?あれから8時間近く経つじゃん!」
少年は急いで布団から出ようとしたその時、「ガチャ」と鈍い音と共に部屋の扉が開いた。
「あ、起きちゃいました?すいません起こすつもりはなかったのですが……お腹は空いていませんか? 」
見た目は僕と同じくらいの男の子で身長は少し小さめだ。コックの服装をしているのだが、色は白ではなく黒色である。手にはお盆を持っており、お盆の上には何もない。
「こ、ここはどこなんだ!僕を誘拐したのか!?」
少年は焦り、
「ゆ、誘拐なんてと、とんでもない!私はただの料理人です!社長に頼まれて料理を持ってきただけです!」
そういうと少年はベットの近くにあるテーブルにお盆を置き、ポケットからメモ用紙と黒いペンで何かを書いて、それをちぎり机の上に置いた。
「そ、それではごゆっくりとお楽しみください。」
少年はそういうと部屋をそそくさと後にした。
「い、一体全体、どうなっているんだ…ここはどこなんだ…」
そう呟いていると…
「起きたかね!少…ともやくん!」
突然どこからともなく声が聞こえ、声の方向を見ると先程誰もいなかった机近くの椅子に男が座っていた。
「あ、あんたは僕の自殺の邪魔をした さがら つかさ!」
「記憶力のいいboyだねぇ!突然のことでとても困惑しているだろうが、お腹は空いているだろう。腹が減っては戦はできぬ!という言葉があるようにとりあえず飯を食べて落ち着いてから話そうか!ともやくん!」そう言うとポケットから黒色の布を取り出し何も置かれていないお盆の上に被せ、先程の少年コックが置いたメモを手に取り、
「えーと…なになに…今晩の献立は、
〜満足感しかない賄い丼〜
〜最近の社会並にに世知辛いチゲスープ〜 の2品です。お召し上がりになる際は熱いのでよく冷ますように。 だってさ、とりあえず…」
男はお盆に被せた黒い布をバッ!と勢いよく取ると、なんとお盆の上には先程までなかった料理があり、2品とも湯気を立てて美味しそうな香りを放っている。
少年は自然と出てくる唾を必死に飲み込み、
「ぼ、僕は不審者から貰うようなゴクッ…怪しい食べ物は食べないゴクッ…主義なので、結構です!」
そう言うと料理を視界に入れまいとそっぽを向く少年。不思議そうに頭をかく男。
「自己紹介したじゃないか…初対面ではなかろうて…毒も何も入れておらん、入ってるのは料理人の愛情だけだろうに…」
とても落ち込んでいるのか肩を落としている。
「そ、そこまでして食べて欲しいのなら…た、食べますよ!食べりゃあ良いんでしょ!」
少年はお盆の上に置いていた箸を乱暴に取り、
「い、いただきます!」と言って賄い丼を手に持ちかっこんだ。すると少年はかっこむ手を止め
…………………………………………………………………………………
「う…う…美味すぎる!」
手が止まらず、砂漠の中でオアシスを見つけたかの如く、命の危険から解放された後に感じる生きることへの強い実感の如く、少年は無我夢中に賄い丼頬張り、詰まりかけた喉をチゲスープで流していく。
それを見ていた男はニッコリと微笑んでいた。
「ご、ご馳走様でした。」
「それは良かった、コックも喜ぶであろうよ!
さぁお代は980円だ!税込でな。」
「え!?金とるんですか!?そんなの聞いてない!」
「最近は売上も右肩下がりでね……貧乏何だよぉ…
1000円出せば解決よ!」
「お、お金持ってないです……財布もありません…」
「うーん・・・どうしようか…お金が無いなら、やっぱり…うちで働くしかないねぇ〜」
「な……」 こ、コイツ謀りやがった!
男はニヤニヤとして腕を組み少年を見つめている。
「これは契約書だ!ペンも渡そう!書きたまえ!」
男はドン!とテーブルの上に紙とペンを置き、少年の方によせた。
こ、これは書かないといけない感じだぁ…コイツめっちゃくちゃ悪い顔してるし……
「あの、ここは一旦家に帰ってお金を……」
「ん?」男はニッコリしながら少年を見る。
「だから、お金は…」
「ん?」
「………」
この男、僕を帰さないつもりだ!
「諦めがついたかなともやくん?」
「わ、わかりました…働かせていただきます。 」
「そうか!そうか!良い判断だ!めんどくさい手続きは無しにしようか!」
そう言うと男はテーブルに置いていた契約書をおもいっきり破った。
「ようこそ!仮装旅館"ともし火亭"へ!君は今日からここの従業員だ! 」
僕はとんでもなくやばい人に目をつけられたらしい……
この先どんなことが待ち受けているのだろうか…
少年はため息をした。
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読み終わったよ〜🌙 自♡♡♡ようとしてた智也くんを、謎の男・相良さんが引き止めて旅館で働かせる話…冒頭の「最高の日だ!」って叫びながら飛び降りようとするシーン、切なさと不思議な明るさが混ざってて一気に引き込まれた。相良さんの掴みどころないキャラ、料理人から出てきた幻みたいな賄い丼とチゲ、全てが幻想的で「ともし火亭」がどんな場所か気になって仕方ない🥀 智也くんが食べ物に感動して無我夢中になる場面、涙出そうになった…“生きること”をそっと肯定されてるみたいで。続きがすごく気になります!