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その瞬間、全員が一斉に声の方を見上げた。
スピーカーからの声は冷たく、感情の一切を感じさせない。
「君たちは特別な理由で選ばれ、この場所に連れてこられた。これから行われるのは、生き残りを賭けた『人狼ゲーム』だ。」
その言葉に、誰もが息を呑んだ。
「人狼ゲーム」という単語が、頭にこびりついて離れない。
カイトはその言葉を聞いたことがあった。
ゲームやパーティーで行われる推理遊びの一つだ。
だが、ここで行われる「ゲーム」が、ただの遊びではないことは明らかだった。
「君たちは今から、『村人』と『人狼』に分かれ、それぞれの役割を演じることになる。人狼は夜ごとに村人を襲い、村人は昼間に投票を行い、誰が人狼かを見極めて処刑する。村人が全員生き残るか、人狼が全滅するまで、ゲームは続行される。」
「ふざけるな!俺たちをここに閉じ込めて何をしようってんだ!」短気そうな少年が立ち上がり、スピーカーに向かって怒鳴りつけた。
しかし、その問いに対する返答はなかった。
代わりに機械の声が続けて説明を始めた。
「このゲームは、君たちの命が懸かっている。失敗すれば死ぬ。それがこのゲームのルールだ。だが、君たちにはそれぞれ特殊な役職が与えられている。それを上手く使い、勝利を掴み取るのだ。」
その瞬間、カイトの前に一枚のカードが現れた。
それはディスプレイのようなもので、そこに表示された文字にカイトは目を奪われた。
「裏占い師」
裏占い師?一体どういうことだ?普通の「占い師」ではなく、なぜ「裏」なのか?カイトは混乱しながらも、これが自分の与えられた役割であることを理解した。
占い師なら、人狼の正体を見抜く力を持っているはずだが、「裏占い師」とは何を意味するのだろうか。
「役職については後ほど詳しく説明される。今はそれぞれが自分の役割を確認し、このゲームの開始を待つがいい。」
スピーカーの声はそこで途切れた。
部屋には再び静寂が戻ったが、誰もその静けさを心地よいとは思えなかった。
全員が役職の書かれたディスプレイを見つめ、不安と恐怖が渦巻いている。
「これって……本気なのか?」
一人の少女が震える声で言った。
「遊びじゃないの……?」
「そんなわけねぇだろ!」先ほど怒鳴った少年が拳を振り上げた。「奴らは本気だ。こんな場所に閉じ込められてるんだぞ。俺たちは本当に、命を賭けたゲームをやらされるんだ!」
誰もが黙り込んだ。
その現実が、ようやく全員に押し寄せてきた。
カイトは拳を握りしめた。
占い師として、自分には人狼を見抜く力がある。
それが本当なら、このゲームに勝てる可能性があるはずだ。
しかし、彼の役職は「裏占い師」。
その違いが意味するものを、まだ彼は知らなかった。
「どうすればいいんだ……」
カイトは心の中で自問した。
生き残るためには、誰が敵で誰が味方なのかを見極めなければならない。
そして、誤った判断をすれば、自分も他の誰かも命を落とすことになる。
「絶対に生き残ってやる……」
カイトは強く決意した。
この恐ろしいゲームの中で、どんな手を使ってでも、自分は生き延びる。
そして、他の誰かが人狼だということを証明しなければならないのだ。