「人間は成長していく中で「十人十色」といわれるような、様々な個性を獲得しながら発達を続けていくんだけど、たとえば、陽気・几帳面・怒りっぽい・神経質・飽きっぽいなど・・・性格を表す言葉は数え上げればキリがないわよね、でも誰もが様々な性格をもっている中で、中にはその一部分が極端に偏ったようになり、社会生活を送る上で自分も他人も、苦しませてしまうようになる人がいるのよ
こうした人々のことを精神医学の分野では「パーソナリティ・ディスオーダー」と呼んで日本では・・・まぁ一種の「人格障害」と呼ばれるようになっているわ」
「一種の・・・障害って・・・・いうものなの?」
私は空のグラスをテーブルに置いた
「ええ・・・・なかでも気分のムラが激しくて、物事の良し悪しを極端に決めつけたり、強いイライラの下で暴力的になってしまったり」
「それ、俊哉そのものよ」
弘美さんは私をみて頷き、さらに続けた
「そして・・・そんな人って・・・・都合よく、自分の要求を満たしてくれるような人を見つけるのがとても上手いのよ、例えば暴力的な人は同じように暴力的な人を嫌って、大人しくて自分の言いなりになる人を傍に置きたがるって言うか・・・・ドラマとかでもよくあるじゃない親分とヘタレな子分の関係とか・・・」
「あら!素敵!私はさしずめ俊哉のヘタレ子分って所ね」
私は皮肉ってみせた
「そうじゃないでしょう」
彼女が真剣な面持ちで言った
「貴方は純粋で、素直で愛情深いだけよ!それは今まであなたの周りに善人しかいなくて、すばらしい環境ですくすくと純粋に育ったってきたから、俊哉のよう常軌を逸したふるまいに対抗する用意が出来ていなかっただけよ」
「やっぱり世間知らずってことよね・・・」
私は気を落として言った
「これから知ればいいじゃない 」
弘美さんは手足をだらんと投げ出して寝ている、ハルの方へと寄って行った
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