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魚影を追って

第2話ー昔の話ー


□□□


…私がここに来てから2時間ほど経った。心なしか時間が進むのが遅くなっている気がする。机以外何もないつまらない空間。秒針の音が部屋中に響き渡る。もう飽き飽きしていた。

「……っもう連絡入れちゃいましたよ!!いい加減にしてくださいボス!そんなに貴方の我儘ばっかり聞いてられないです!!」

沈黙を破る彼女の言葉。声質的にきっと澪さんのものだろう。どんな我儘を言ったのだろうと暇つぶし程度に思考を巡らせ始めた頃。

「「こんにちはーーっ!!」」

元気に二人仲良くどんっと音を立てて扉を開けた。一人はライトベージュ。もう一人はマルサラの色の髪をしていた。

「おやおや、嬢ちゃん見ない顔だね」

「どうしてうちに?まさか誘拐かな?」

そんなわけないか〜とけたけた笑う二人を私は黙って見つめることしかできなかった。そう、本当に誘拐されてしまったから。

「それで?嬢ちゃんどうしたの?」

「おねーさんたちが遊んであげようじゃないか!」

そう言うと彼女たちはトランプやらかるたやら遊べるものを机の上に広げ始めた。とても活き活きした様子だ。

「……んで、嬢ちゃんはどうしてうちに?」

トランプを交ぜつつベージュの彼女が言う。誘拐されて、と聞こえるか聞こえないかくらいの声量で一言呟いた。すると彼女たちは顔を見合わせ「……もしかして月華のこ?」と聞いてきた。

「……、まぁ…そんな感じです。」

「あーね、あたし佳奈。そっちの赤いのが怜那。短いけどよろー」

そう言うと私の頭を撫でようと手を伸ばす。私は咄嗟に避けてしまった。

「あ、ごめ。嫌だった、?」

「あ、いや…佳奈さんが嫌なわけじゃなくって…ちょっと思い出しちゃうんです。」

口ごもると彼女は「あたしたちが聞いていいなら。」と優しく耳を傾けてくれた。

私はぽつりと言葉を紡いでいく。


□□□


これは私は今よりもっと小さかった頃。私は秋刀魚でそんなに強いとは言えない種族の分類だ。日々大きな生き物たちから逃れてひっそりと暮らしているつもりだった。

終わりは唐突だ。

ある日。その日は悪寒で目が覚めた。両親は買い物に。と商店街へと足を運んだ。私は一人で留守番だ。危険なのだ。それくらい分かっている。でもその日は多少我儘を言ってでも両親と一緒に行っていれば良かった。

何時間経っても親が帰ってこなかった。不思議に思いつつも暇だからとテレビをつける。するとライブ映像が流れていた。

──商店街だ。両親が行ったところだ。どうやらマフィア…ならぬ強い種族の群れが来たらしい。じんわりとかく汗を風が撫でる。私は玄関から裸足のまま両親の元へ駆けていった。


商店街は酷い惨状だった。店は崩れて人は倒れて。そして視界の端の方に両親が映る。ぼろぼろに崩れた両親がだ。きっとアイツらに食べられてしまったのだろう。衝撃的な内容だった。食物連鎖だから当たり前だがやっぱり悲しい。さみしい。私は暫く動くことができなかった。両親が死んでしまったという事実をはっきりとさせたくなかったから。

「、沙麗……、きて、」

微かに聞こえる母親の声。私は意識を取り返し両親の元へと走って向かった。父親はもう死んでしまっているようだ。母親を庇って死んだらしい。実に父さんらしいなと、そんなことを思った。だがそんな母も呼吸が浅い。脈も速い。もう死んでしまう。どうしよう。どうして?なんで?どうすれば?私は必死に脳を働かせた。

「……ありがと。いい子。上から、見守ってる。から。もうちょっと、生きられたらなぁ…」

寂しく悲しく辛い。そんな一言。それが母親の最後の言葉だった。

最後の力を振り絞り母親は私の頭を撫でる。血で染まった細くきれいな手は私の大好きな母親の手だ。頭をくしゃりと撫でられる。私の視界はどんどん歪みを増していく。

「母さん…父さん、大好きだよ。私がいくまで待っててね。」

母には聞こえていれば良いな。と紅く腫らした目元で呟いた。


続く。

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