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セカイに行くと、すぐに私はミクとリンに連行された。
両腕を掴まれて、私の言葉にも返事をしないで、付いてきて、とただ言われた。その異常事態に私は従うしかなかった。が。
「まふゆさん……」
「先日のあれはどういうこと?」
連れて来られた先にいたのはまふゆ。そこで、ミクとリンは私を開放して離れていった。
怒ってる、なんて聞けるような雰囲気ではない。明らかに怒ってる、オーラが見える。
「あー、前に愛莉と雫に作詞担当としてのまふゆの話をしたのね。でも名前までは出してなくて……。もし弓道部に知り合いがいるって伝えて、どんな人かって聞かれたら、ほら、ね?」
「何が」
「作詞担当イコールまふゆになるのは駄目だと思って……。勝手に伝えたら怒るかなって、はい……」
「嘘でも付けばよかったのに。小学生の時仲が良かったとか、幼稚園が同じで時々遊んだとか。あと伝えたところで怒らないよ。勝手なこと言わなければ」
「でも、そんなことしなくてもよくない? 話は合わせられたんだし。嘘付いちゃうほうが大変だと思うけど……」
分からずとも私に合わせてくれたお陰で、違和感のない会話はできていたのだ。今後まふゆをどうやって紹介するかが鍵だが。
「いや、でも……駄目だよ……」
「何が。てかどうしたの。なんかまふゆらしくないけど」
「別に。ただ、あんな態度取らなくたっていいのになって……」
「ん?」
「あの、分からない、けど……」
まふゆは俯いて、そっと私の右手の指先を掴んだ。
行動を理解した瞬間、身体中の熱が顔に集まった。まさかそんな行動をされるとは。まふゆが何を思っているのか、確かめる必要があると思った。
「……さ、寂しかった、の?」
「そういう訳じゃ……分からない」
「じゃあ、悲しかった?」
「さあ……でも、」
まふゆは、私の指先を握る力を少し強くした。
「嫌だと、思った……のかな」
「……そっ、か」
胸に残るのは罪悪感。
私は、握られてたまふゆの手をそっと離して、手を開かせた。そして、指と指の間に指を絡ませる。それから余った左腕を背中に回し、まふゆのことをそっと抱きしめた。
「ごめん、まふゆのことちゃんと考えられてなかった」
こんなにも弱ってなかったら、いつものまふゆだったら謝らなかったのに。こんな行動なんて取らなかったのに。
まふゆは私の手を握り返して、腕を回した。抱きよせる力が少し強くて、身体に熱が溜まっていく。まふゆの返事を境目に、静寂な時間が訪れる。
どちらのか分からない鼓動が、少しだけ早かった。