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鬼がその力を解放した瞬間、空気が震え、周囲の温度が一気に上昇した。彼の手から伸びるのは、無数の鋼の鎖。それはまるで生き物のようにうねり、暴れながら僕に向かって迫ってくる。
「般若が…投げたのか?」
僕の心の中で、混乱が広がる。鎖は鋭く、容赦なく僕に向かって飛んでくる。だが、僕はその鎖がどれほど危険か、知っていた。かつての般若がそれを使っていたのだ。あの時、僕の体に巻きついたその鎖の感触が、今も忘れられない。鋭く、冷たく、そして強力だった。
「…くっ。」
僕は急いで身をかわすが、鎖はその速度で簡単に追いかけてくる。目の前で猛威を振るうその鋼の鎖は、僕が感じる恐怖をさらに増幅させる。だが、恐れている暇はない。僕は全力で跳び、回避の動作を繰り返す。だが、鬼は止まらない。彼はただの使い魔ではない。今、彼の中で暴走している感情が、力を増幅させている。
その時、空気が一変した。
「――!?」
突然、背後から、強烈な気配が迫ってきた。僕が振り返る暇もなく、般若の姿が目の前に現れる。幻のように、彼女はすでに僕のすぐ近くに立っていた。
「やらせない。」
般若の言葉は冷たく、計算されたものだった。その目には冷徹さが宿っている。しかし、僕にはその目が、ただの冷徹なものではないことが分かる。彼女もまた、鬼と同じように感情に振り回されている。
「奇襲か…」
般若の手に握られた武器が光を反射し、僕に向かって突き刺さろうとする。それはただの刃物ではない。彼女が使う武器は、恐ろしいほど鋭く、鋼のように冷たい。
僕はその刃を避けるために、身体をよじる。しかし、完全に避けることはできなかった。刃が僕の服を裂き、肩をかすめる。
「くっ、こんな…」
その刃が僕の肩に深く食い込んだ瞬間、僕の体が一瞬動きを止めた。痛みが体を貫き、冷たい汗が額を流れる。しかし、僕はここで倒れるわけにはいかない。
鬼が僕に向かって更に鋼の鎖を振り上げる。それが僕に迫るその瞬間、僕は必死に体を動かす。全身に響く痛みに耐えながらも、僕は鬼の攻撃をかわすために、最後の力を振り絞った。
だが、その時、再び般若が動き出す。
「あなたはもう終わり。」
彼女の言葉とともに、その鋭い刃が一気に僕の胸に迫る。僕はそれを避ける余裕もなく、その刃が迫るのを感じる。だが――。
その刃が、空を切った。
「――?」
突然、空間が一瞬、静寂に包まれた。次の瞬間、般若の刃はどこにも届いていない。その代わりに、背後に響く一発の銃声。
「待て。」
港の声が、まるで雷鳴のように響く。その声には、冷徹な指示が込められていた。港が、この場に現れたのだ。
「お前たちは、この戦いの中でまだ終わりを迎えていない。」
港は、静かに、そして確実に戦場を掌握していく。その冷徹な目の奥には、計り知れないほどの経験と、無数の戦いをくぐり抜けてきた痕跡が見え隠れしていた。
鬼の攻撃は一旦止まる。般若の刃も、無意識にその動きを止めた。
「この先の戦いは、俺が引き受ける。」
港の声は、無駄に高らかではない。それは、冷静でありながらも、明確な意志が感じられるものであった。
その瞬間、僕はようやく気づく。鬼と般若、二人の間に流れる本当の感情が、これからの戦いをより一層複雑に、そして恐ろしいものに変えていくのだと。