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港が現れた瞬間、空気が張り詰めた。彼の冷静さは、まるで戦場の上級者そのものだ。鬼の巨大な体が前に立ちはだかり、圧倒的な力を見せつけているが、港の目は一切動じない。その瞳には、まるで鬼の力をも凌駕するかのような冷徹な意志が宿っている。
「お前が相手か…」
鬼がその目を港に向ける。その目には、怒りと混乱が入り混じっているが、どこか不安定なものも感じる。彼の心の中で、混沌とした感情が暴れているのだろう。だが、港はそんな鬼の感情に一切引き込まれることはない。彼の視線は、まっすぐに鬼に向けられたままだ。
「動け、鬼。」
港の声は、まるで命令のように響く。その言葉に、鬼は一瞬ためらう。しかし、すぐに鋼の鎖を振り回し、港に襲いかかる。力強い鎖が空気を引き裂き、港に向かって迫る。
「甘い。」
港は冷静に、それらを見極めながら軽く一歩後ろに下がる。鎖が目の前をかすめ、まるで自分の動きが予測されているかのように、鬼の攻撃は空を切る。その動きは無駄ではないが、港の反応はそれを完全に見切っていた。
「来るなら、もっと速く。」
港が次の瞬間、素早く前に出る。今度は鬼の攻撃をかわすだけではなく、攻撃の隙間に滑り込み、鬼の体の一部を素早く打つ。鋭い打撃が鬼の体を揺らし、鬼は思わず後退する。
「うぅ…!」
鬼は怒りを爆発させる。彼の体から放たれる力は凄まじい。再び鎖を振るうが、今度はその速度と威力が違う。目にも留まらぬ速さで振り回される鎖が港を捉えようとするが、港はそれをかすめてすれ違う。鬼の攻撃はまるで空気を切るように虚しく広がるだけだ。
「なぜだ…!?」
鬼が叫ぶ。その目には、完全に狂気と混乱が浮かんでいる。彼の全身からは疲れの色が見え始め、怒りが彼を支配しているようだ。しかし、港の冷静な目には、それがどうでもよく見える。
「お前はただ力に頼りすぎている。」
港は冷静に、鬼に向けて言葉を放つ。その言葉に、鬼の動きが一瞬止まる。彼は自分の力を誇りに思い、またその力に溺れていた。しかし、港の言葉がその心に突き刺さる。
「力だけでは勝てない。考えろ、鬼。」
港がその言葉を放った瞬間、鬼の表情が歪む。彼はその言葉を理解したくなかった。しかし、港の冷徹な目が、鬼の心の中に巣食う恐怖を引き出す。
その隙に、港は一歩前に出ると同時に、鬼の側面に鋭い一撃を放つ。鬼の体が横に傾き、よろめく。その瞬間を逃すことなく、港は素早く鬼の背後に回り込む。
「人間らしさが残っている。」
港のその言葉が鬼に刺さる。その言葉が、鬼の内面にある迷いを引き出し、彼の攻撃が少しずつ鈍くなっていくのを感じる。
「人間らしさだと…?」
鬼の目が揺れる。彼はどこかで、自分がまだ人間だった頃の記憶を失いたくなかった。しかし、鬼となってしまった今、その人間らしさを持つことが、最大の弱点に感じられる。
その時、港が再び動いた。
「終わりだ。」
港の鋭い一撃が鬼の胸に直撃する。その力が鬼の体を圧倒し、彼の意識が一瞬遠のく。鬼はそのまま膝をつき、地面に崩れ落ちる。
「お前の戦いは、もう終わった。」
港の声が静かに響く。鬼はその言葉を聞き、力なく頷くしかなかった。彼はもう、かつての自分に戻ることはできない。だが、それが彼の運命だった。
港は鬼を見下ろしながら、深く息を吐く。その冷徹な目は、鬼を完全に見切ったように見える。しかし、港自身もまた、この戦いが終わったわけではないことを十分に理解していた。
「次はお前だ。」
港の目が、般若へと向けられる。