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谷川さんは二階へとコンピュータとにらめっこしに行く。前と同じだ。
勝手が解らず。中村・上村の後に続くと、最終目視検査の場所のB区へと歩きだしている。私たちはベルトコンベアーの前に立ち、作業を開始した。
作業はやはり、田戸葉がいた時の最終目視検査だった。
早速、作業とともに雑談開始だ。
「あ、そうだ。夏野菜。隣の家のババァからナスをまた貰ったんだ。いっぱい……」
中村は声の調子を弾ましている。
「またですか。俺、食いきれないな」
上村は中村からナスを貰っているようだ。
「それでさ。赤羽くん。貰ってくれないか」
私は混乱する頭で無理に考え事をしていたが、頭の片隅にニコニコと料理をしている安浦の顔が浮かび上がった。
「ええ。貰います。ありがとうございます」
「かなりの量だよ」
中村は真剣な顔になった。
「え……ええ……。貰います」
料理は安浦が担当だし、喜ぶかな?
私は死骸である汚れたペットボトルを洗浄機にいくつか入れると、何気なく後ろを向いた。節電の工場の明かりの広がりに、複数ある大型の機械類の間には、やはり誰もいない。私たちが歩ける安全通路にも行き交う人は誰もいない。何だかんだで、仕事が楽でその上、雑談が出来てとてもいい職場である。
けれど、今は一連の夢と夢の侵食で、その安楽な世界が崩壊してしまった。このような体験をしなければ、楽な人生を一生謳歌していけるのだろうに……。
私は嫌でも平安の世界を望むために南米に行くことに決心を固めるしかなかった。それは生まれて初めてその決心は頑ななものとなった。
12時から13時の休憩時間は、三人とも無口になりがちになる。
それのお陰で、午後からまた長時間の雑談と労働に耐えられるようになるのだ。
エコールの休憩所は、せせこましいところでもある。二階にあるのだが、何の変哲もないテーブルが2つに、イスがそれぞれ4つある。そこには電子レンジとお湯があり、前は私はカップラーメンかコンビニ弁当を食べていた。今では安浦が作ってくれたお弁当だが……。
私は急に心配する心が生じて、家の安浦に電話をしようかと思ったが、彼女もメイド喫茶で働いていることを思い出した。
作業も終わりに近づくと、