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千波
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お豆腐メンタル
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耐え内さん、第7話読みました🙌 細川先輩、めっちゃ頑張ってるんですね。勉強しながら脚本も書いてるって、尊敬しちゃいます。図書室で黙々と作業する姿、静かで綺麗な印象でした。 最後の帰り道、「俺じゃなくて明里に言ってくださいよ」って照れ隠しするところ、佐藤君らしくて可愛かったです。二人の距離がちょっと縮まった感じがして、こっちまで温かくなりました。次が楽しみです🌙
トイレの花子さんの撮影に成功?してから、数日が経った。
今日は午前で授業が終わり、昼過ぎには自由になった。
午後から特に予定はない。せっかく時間があるのだから、後回しにしていた課題を片づけることにした。
明里に言うとまたお節介やかれそうだから黙っておこう。あー気持ちが重い。
課題に必要な資料を探すため、俺は図書室へ向かった。
図書室に入り、課題に関係ありそうなコーナーで本を探す。
午前中で終わったからなのか、普段より人が多く感じられる。
もっとも、頻繁に利用するわけではないのだが。
受付では本の貸し借りの手続きで人が並んでいる。
普段は空席ばかりのテーブルも半分は埋まっていた。
「こんなものか」
何冊か手に取って中身を確認し、使えそうな本を一冊選ぶ。
これを借りて課題をやれば何とかなるだろう。
受付へ向かおうとした、そのときだった。
「あれ?」
窓際のテーブルに、見覚えのある後ろ姿があった。
「細川先輩?」
「ひゃっ!」
声をかけると、細川先輩が肩を跳ねさせた。
「す、すみません。邪魔しちゃいましたか?」
「い、いえ。びっくりしただけです」
そう言って、細川先輩は胸を撫で下ろす。
テーブルの上には参考書とノート、それから何枚かの紙が置かれていた。
その中に見覚えのある文字がある。
「それって……脚本?」
「はい。まだ下書きで、候補ですけどね」
細川先輩は少し恥ずかしそうに紙を伏せた。
「勉強しながら脚本も書いてるんですか?」
「まあ……そんな感じです」
「すごいな」
思わず口から出た。
勉強だけでも大変なのに、その合間に映画部の脚本まで書いている。
細川先輩は少し照れたように笑った。
俺は持っていた本を見下ろした。
「ここ、いいですか?」
「はい。どうぞ」
俺は細川先輩の斜め向かいの席に座った。
さて、課題を始めよう。
そもそも、なぜ俺が休日でもないのに図書室で勉強なんてしているのか。
原因は簡単だ。
赤点を取ったからである。
先生から出された課題を終わらせなければ、追試を受けることになる。
できれば二度とあんな思いはしたくない。
資料とプリントを机の上に並べ、問題を解いていく。
分からないところは資料をめくる。
ちらっと向かいを見る。
細川先輩は真剣な表情で参考書を読み、ノートに何かを書き込んでいた。
そして、一区切りつくと脚本の紙にペンを走らせる。
勉強と執筆を交互にこなしている。
すごい人だな。
ふと、細川先輩の顔を見る。
綺麗な黒髪に整った顔立ち。
こうして真剣な顔をしていると、映画部で脚本を書いている人というより、映画に出てくる女優みたいだ。
……役者もできるんじゃないか?
そんなことを考えながら、俺は課題に戻った。
「うーん……ここは補足の部分を丸写しにするか」
資料とプリントを交互に見ながら、ひたすら書き写していく。
やがて、校内に下校を知らせるチャイムが鳴り響いた。
「もうこんな時間か」
気づけば、かなり集中していたらしい。
課題をまとめる。
あとは提出するだけだ。
俺は荷物をまとめて席を立った。
「細川先輩、お疲れ様です」
「お疲れ様です、佐藤君」
図書室を出て、そのまま職員室へ向かう。
先生に課題を提出すると、
「そもそも赤点を取らなければ、こんな課題をやる必要もなかったんだからな」
と小言を言われた。
分かってますって。
それでも課題を終えた解放感の方が大きかった。
これで帰れる。
俺は足取り軽く下駄箱へ向かった。
靴を履き替えていると、
「佐藤君」
後ろから声をかけられた。
振り返ると、細川先輩が立っていた。
「あ、先輩。まだ帰ってなかったんですか?」
「はい。私も今から帰るところです」
そう言って、細川先輩は少し迷うように視線を泳がせる。
そして、おずおずと口を開いた。
「あの……よかったら、途中まで一緒に帰りませんか?」
「え?」
思わず聞き返してしまった。
女子と放課後に二人で帰るなんて、初めてだ。
……明里は除く。
急に緊張してきた。
「いいですよ」
何とか平静を装って答える。
細川先輩も少し緊張しているようだった。
いざ二人きりになると、やっぱりドキドキするものなのかもしれない。
校門を出て、二人で並んで歩く。
河川敷はいつもどおり綺麗で男の子たちが元気に走り回っている。
俺はこの景色が気に入っている。
都心と違って空が広い。
でも今日はなんかいつもと違う感覚だ。
しばらく、どちらも何も話さなかった。
隣を歩いているだけなのに、妙に意識してしまう。
そんな沈黙を破ったのは、細川先輩だった。
「……佐藤君に、感謝しています」
「え?」
思わず足を止めそうになる。
「映画部のことです」
細川先輩は前を向いたまま話し始めた。
「今年、新入部員が集まらなかったら、映画部は廃部になる予定でした」
「……そうでしたね」
「私は、人前で話すのが苦手だから。新入生に声をかけることもできなくて……ずっと、そのことがプレッシャーだったんです」
そんな話を聞いたのは初めてだった。
「勉強していても、映画部のことが頭から離れなくて。ちゃんと勉強にも集中できない日が続いていました」
細川先輩が小さく息を吐く。
「でも、佐藤君が入ってくれて、映画部が続くことになって……」
そこで、細川先輩は少しだけ笑った。
「もう、心配しなくていいんですよね」
「これで心穏やかに、勉強も脚本も続けられます」
その言葉を聞いて、胸の奥が少し温かくなった。
「俺じゃなくて、明里に言ってくださいよ」
「え?」
「俺は別になにもしてないですから」
映画部に入ろうと言ったのは明里だ。
俺はその明里についていっただけ。
「だから……」
少し考えてから、俺は言った。
「じゃあ、二人に感謝ですね」
細川先輩は一瞬きょとんとした。
それから、柔らかく微笑んだ。
「……はい」
夕方の道を、俺たちはまた並んで歩き始めた。
さっきまでの沈黙は、もう気にならなかった。