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「……はい」
華はまっすぐに父を見据えて答えた。
声は震えていなかった。
胸の奥から湧き上がる強い気持ちを、そのまま言葉に乗せた。
泰三は一瞬だけ目を細め、何も言わずに手を振った。
「もう下がれ」
華は深く頭を下げ、律と並んで会長室を後にした。
重厚な扉が閉まる音が、やけに大きく響いた。
長い廊下に出ると、華は大きく息を吐き出した。
「……言えました。やっと」
隣に立つ律が、小さく頷く。
「ええ。よく言いましたね」
その言葉に、華は視線を向けた。
二人の瞳が重なり、自然と微笑みがこぼれる。
――もう一人じゃない。
華の胸に、そう確信できる温かな想いが広がっていた。