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マイナスなことばかり考えちゃいけない。
瑞希くんの誕生日の時は、喜んでもらえるように私だって頑張らなきゃ。
そう心に決める。
レストランに着くと数組待ってはいたが、思ったほど早く店内へ入れそうだった。
「良かったね」
「うん」
「瑞希くん、運転お疲れ様」
順番を待っている間、私は、彼の手のひらのマッサージをした。
「なに?それ?すげー気持ち良いんだけど」
「大学の時に友達に教えてもらったの。手にもツボがあるんだって」
彼の手は大きかった。
当たり前だけど、男の人の手をしている。
「じゃあ、指を少しひっぱるね」
彼の指を普通にマッサージしようとしたけれど、この指が私の中に挿ることがあるんだ。しかも二本。
変なこと想像しちゃった。まだ昼間なのに。変態、私。
「どうした?」
私の様子がおかしいことに気づいたのか、声をかけてくれる。
エッチな事を考えていただなんて言えません。
「お待たせいたしました。次のお客様どうぞ?」
混みあってはいたが空間が広かったため、圧迫感などは感じられなかった。
「こちらの席へお願いします」
案内されたのは、運よく、窓際の海の見えるテーブル席だ。
「すごーい、キレイ」
太陽の光が海面へ反射して、とてもキレイ。
「良い席で良かったね」
瑞希くんも楽しそう。
私が食べたかったシーフードパスタとおススメのシーフードピザをシェアすることにした。あとは、瑞希くんが選んでくれた前菜やデザート。昼間から贅沢な食事だな。
「美味しい―」
「美味いな」
魚介がふんだんに使われているのに、臭みはなく、食べやすい。
味付けもちょうど良かった。
「夜は、和食っぽいから、ランチはイタリアンで良かったかもね」
夜のお料理も楽しみだな。昼食を済ませる。
「葵、行きたいところある?」
「う……んと」
「もしなかったら、早めにチェックインして、荷物置いて、旅館から徒歩で海に行けるらしいから、海行かない?」
「うん、行きたい!」
「そうしようか」
レストランから車で一時間ほど。宿泊する旅館についた。
「すごーい!!」
こんなに大きなところなのに、一日十組の限定なの?
車を玄関近くにつけると、旅館の人が出て来てくれた。荷物を運んでくれ、受付を済ませ、部屋へ案内される。
「広ーい!」
私の部屋よりかなり広い。というか、比べてはいけない気がする。
畳の匂いがする落ち着いた和室。
そして、旅館の人が窓際の障子を開けてくれると海が見えた。
「眺めがすごい、綺麗!」
「お部屋についている、露天風呂はこちらです」
仲居さんのうしろをついて行くと、お部屋の庭のようなところにしっかりと露天風呂があった。洗い場などもあり、広い。露天風呂からも海が見える。
「館内大入浴場もありますので」
一通りの説明を仲居さんに受ける。
「それでは、ごゆっくりお過ごしくださいませ」
パタンと扉が閉まり、仲居さんは部屋から出ていった。
「瑞希くん、ありがとう。こんな良いところ、泊まったことないし、自分じゃ泊まれないから。嬉しい」
景色を見ていたため、振り返ってお礼を瑞希くんに伝えようとした。
しかし
「っ、んんっ」
瑞希くんに抱きしめられる。顎をクイっと上に向かされ、キスをされた。
「ふっ、んん!」
昼間なのに、なんか激しい。
舌と舌が絡まって。
瑞希くんが腰を支えてくれているから立ってられるけど、こんなキスされたら力抜けちゃう。
「瑞希く……?ふぁっ」
「はぁ。ごめん、雰囲気に酔った。もう抱きたいくらい」
彼の目を見たら、本気だった。
私は話を逸らそうと思い
「海行かないの?」
そう提案してみた。
「そうだな。せっかくだから行こうか?」
良かった。離してくれた。
「本当に旅館から近いんだね。海岸!」
歩いて徒歩五分以内だった。
ファミリー向けの海水浴には向かないのか、混雑していない。海の家らしきものもない。
この周辺に泊まった宿泊客が利用するくらいの海岸なのでは、そんな雰囲気だ。
瑞希くんと手を繋ぎ、膝下まで海に入る。
「ひゃー、冷たい」
「俺、よく考えてみれば、好きな子と旅行来たの初めてかも」
「えっ。そうなの?」
元カノもいたんだよね?なんか意外だな。
「すげー楽しい。なんか仕事のこととかいろんなこと忘れられる。非日常を感じられるって言うか。まぁ、こんなに楽しいのは葵が一緒にいてくれるからだろうけど。また来ような?次はどこに行こうか?」
彼はニコッと笑ってくれた。
次は……。どこに行けるんだろう。
「今日」で終わるんじゃなく「次」もある。
そう考えるだけで嬉しい。
しばらく二人で海で過ごした。
「葵。夕ご飯まで時間あるから、軽くお風呂入る?」
そうだ、海に行ったら、汗をかいてしまったし。
夜また入りたければ入ればいいよね?
「うん、入ろうかな」
入ると言ったけれど、この場合、大浴場を選択すればいいのか、部屋の露天風呂を選択すればいいのか。
部屋の露天風呂なら、瑞希くんと一緒に入るってこと?
想像したら、顔が熱くなる。
「今、大浴場空いてそうだし。そっちに行く?せっかくだから、いろんな風呂入りたいよね。温泉」
彼の言葉を聞いて、ほっと胸を撫でおろす。
が、彼からうしろから急に抱きつかれ
「夜は、一緒に露天入ろうね?」
耳元で言われた。
首筋に彼の息がかかり、ゾクゾクしちゃう。
一緒に大浴場へ行き、一時間後に休憩所で待ち合わせをした。
時間もまだ早かったため、お客さんが一人しかいなかった。もともと一日十組程度の宿だから。ゆっくり入れそう。
身体を洗い流し、お風呂に入る。
少し高温だと感じたが、温泉に来たっていう感じがして、特別な気分に浸れた。
気持ちいいな。
湯舟に浸かりながら、最近のことを思い出す。
急に変わった環境。
まさか尊と別れることになるなんて思わなかった。
今じゃ、怖いというマイナスな感情しかないけれど。
それでまた瑞希くんと再び会って、こんな関係になるなんて。三年前は思ってもいなかったな。
運命なんて言葉、私はあんまり信じていなかったけど、引き寄せてくれたのかな。マグネットのように。