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……静かになった。
喉が焼けて、
声が出なくなった後の沈黙。
教室でもない。
夜でもない。
朝でもない。
時間が、
意味を失っている。
俺は床に座り込んでいた。
どこかも分からない場所で。
――いや。
分かっている。
ここは、周回の隙間だ。
戻る前。
戻らない選択をした後。
そのどちらでもない場所。
⸻
「解放してくれ」
声に出したつもりだった。
でも、音にならなかった。
代わりに、
足音がした。
ひとつ。
ゆっくり。
確実に。
顔を上げる。
紫色。
花じゃない。
アイコンと同じ色。
そこに立っていたのは、
俺と同じ顔をした“誰か”。
でも、目が違う。
感情が、
もう無い。
アリウム「やっと、ここまで来たか」
俺は笑う。
「……お前が、
俺をここまで
追い込んだんだろ」
アリウム「違う」
アリウム「君が選んだ」
アリウム「“救う”という言葉を
言い訳にして」
拳を握る。
「ふざけるな……」
「俺は……」
「俺は、
何度も戻らされた!!」
アリウムは、
一歩近づく。
アリウム「違う」
アリウム「戻ったのは、
君が
“耐えられなかった”からだ」
⸻
頭の奥で、
音がする。
チャイム。
リボン。
十円玉。
ミオの声。
ユウの名前。
全部が、
一気に流れ込む。
俺は、
頭を抱える。
「もうやめろ……」
アリウム「やめる方法は、
最初から
一つしかない」
顔を上げる。
「……何だよ」
アリウムは、
静かに言う。
アリウム「君が
“主人公であること”を
やめることだ」
⸻
世界が、
揺れる。
ミオの姿が、
遠くに見える。
でも、
近づけない。
ミオ「……ねえ」
声だけが、
届く。
ミオ「今度は、
戻らないで」
ミオ「私、
薄くなるの、
もう平気だから」
俺は、
叫ぶ。
「そんなわけあるか!!!!」
ミオ「あるよ」
ミオ「だって」
ミオ「あなたが戻るたび、
あなたの顔、
どんどん
“人じゃなくなる”」
その言葉で、
何かが、
完全に折れた。
⸻
アリウム「解放してやるよ」
アリウム「ただし」
アリウム「君が
“何をしたか”を
全部抱えたままな」
アリウム「忘却は、
救済じゃない」
アリウム「罰だ」
紫色の光が、
視界を埋める。
最後に見えたのは、
黒板に書かれた文字。
《紫色のヒヤシンスが枯れ落ちた時に》
その下に、
小さく。
《観測者:アリウム》