テラーノベル
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美和と別れて、2人になると、「たまには、外食でもするか?」と、匠が言ってくれた。
「うん、いいね」
今から帰って食事の用意をしなくちゃ、と思っていたので嬉しかった。
「何食べたい?」と聞かれて、
「そうだなあ〜」と悩んでいると、
「豪勢に焼肉でも行くか?」と匠が言った。
少しイヤな思い出が蘇ったが、そんなことを言っていたら、匠とどこへも行けなくなる。
なので、
「うん! 焼肉行こう!」と言った。
そして、匠が検索してくれて、マンション近くの焼肉屋さんを予約。
「すぐ近くだから、呑んでも歩いて帰れるね」
「うん、そうだな、呑むぞ〜!」
「呑むぞ〜食べるぞ〜!」
「ハハッ」
「「オオ〜!」」
そして、私たちの最寄り駅まで電車で帰って、焼肉屋さんへ
「とりあえず、生で良いか?」
「うん」
「お疲れ〜」
「お疲れ様〜」
生ビールで乾杯した。
次々に運ばれて来るお肉や野菜。
タン塩から焼いてくれる匠。
「ありがとう」
「うん、もうコレ焼けたぞ」と器に取ってくれる。
「ありがとう! いただきま〜す! う〜ん、美味しい〜! 最高〜!」と言うと、
「綾は、タン塩が大好きだよな」と言う。
「うん、私、タン塩さえあれば生きていける!」
「ハハッ」
「ん? なんで? 私、匠に言ったっけ?」と聞くと、
「何度か皆んなで焼肉行っただろ?」
「あ、そっか……」
よく覚えてくれてたんだと思った。
「たっくんは、私推し?」と聞くと、
「ハハッ、そうだよ! なんだもう酔って来たのか?」と言うので、
「1杯では、酔わないわよ!」と言うと、
「そうだった! 綾、俺より酒強いかもな」と言う。
「そうかなあ? お父さん似かな?」
父もこの前は、嬉しくていっぱい呑んでいたが、
やはり、歳のせいか弱くなってきたなと思った。
「また、お父さんと呑んであげてね」
「おお! 任せとけ!」
「ふふ、まあ、私の方が強いけど……」
「ハハッ、自分で言ってんじゃん!」
「ふふ、負けない!」
「いや、勝ち負けじゃないって」
「そっか、美味しくいただきま〜す」
そして、
「おお! もうおかわり頼むか?」と聞いてくれる。
「うん!」と、いつもは、2杯目は違う物を頼むのだが、珍しく又生ビールにすることにした。
「匠も、ビール?」と聞くと、
「うん」と、言うので生ビールを2杯注文した。
美味しいビールと焼肉、最高だ!
どんどん焼いてくれて、どんどん食べて呑む。
トイレに行きたくなったので、
「ちょっと失礼!」と、トイレに行くことに……
そして、席に戻る時に、私は、見てはいけないものを目撃してしまった。
行きは、気づかなかったが、たまたま目に入った席のカップルがイチャイチャしてるなと思ったら、智之が先ほど一緒に居た若い女性社員と居た。
「え!」
そこまででも、ドン引きだが、ちょうど私が横を通る時に、女性から智之にキスをした。
避けるどころか、笑い合っていた。
──最低だ! やっぱりアイツは、堕ちるところまで堕ちるんだ!
「美味しいね〜」
「うん、美味い!」
それだけで幸せだ!
そして、締めの冷麺まで食べて、お腹がいっぱいだ。
「あ〜どうしよう! 食べ過ぎたあ〜」
「俺も〜! 美味かったからな」と言う匠。
「うん」
「ちょっと俺もトイレ」と匠もトイレに行った。
──もう、智之たちは、帰ったのかなあ?
出来れば、こんなところで会いたくない!
マンションの近くだし、
また浮気現場に出くわすなんて、最悪だ。
アイツは、絶対、地獄に堕ちる!
すると、匠が戻って来た。
「もう居なかったぞ」
「そう、良かった。じゃあ帰ろうっか……」
と、席を立ってお会計へ
匠が支払ってくれている。
そう言えば、お金のこと、まだ何も決めていない。きちんと話さなきゃな。
「ご馳走様でした」
「おお」
「お金のこと、ちゃんと決めようね」と言うと、
「え? そんなの大丈夫だよ!」と言うが、
「ううん、私も働いてるんだし。ちゃんと後で決めよう!」と話しながら外に出ると、
お店とお店の間で、カップルがキスをしていた。
──!!!
智之とさっきの女だ!
私の顔が驚いた顔になったものだから、匠も気づいたのだろう。
そちらの方を見て……
「え?」と、言ったが、
私は匠の手を取り、首を横に振り、その場から離れた。
「関わりたくない!」
「分かった」
なぜか2人は、早足で歩いていた。
しばらく黙って歩いて、
「ハハッ、だから、何で俺たちが逃げなきゃいけないんだって」と笑っている匠。
「確かに! だよね。でも、面倒くさいのは、もうイヤだから」
「だな……」
そこからは、少しゆっくり歩いた。
12月にもなると、さすがに気温も低く、手が冷たい。
手を繋いだまま匠のコートのポケットに私の手も入れてくれた。
「あったかい」
「うん」
空を見上げると、
「あ、三日月! 今日は綺麗に見えるね」
「ホントだな」
「1番星も見える!」
私は、星空を眺めるのが好きだ。
「うん! 都会は星の数が少なく見えるからな〜田舎の方に行くと満天の星空が見えるのにな」と言う匠。
「そうだよね、満天の星空、見に行きたいなあ」と言うと、
「そうだ! 綾、満天の星空を見に行こう!」と言う。
「え? どこまで?」と聞くと、
「そうだな、沖縄まで行くか? 新婚旅行に!」と言う匠。
「あ〜行きたい! でも、まだ結婚してないよ」と笑いながら言うと、
「そうだな、もう籍入れるか!」
と言った。
私は、ジーッと匠を見た。
「ん?」と言うので、
「今のプロポーズ?」と聞くと、
「うん」と微笑んでいる。
「匠、いつもサラッと言うから、どれか分かんない!」と言うと、
「あ〜ちょっと、サラッと言い過ぎたか……」と反省している。
なので、私も、
「良いよ!」とサラッと答えた。
「ふふ、綾〜」とぎゅっと抱きしめる匠。
キスする勢いだから、
「ダメだよ」と言うと、
「そうだな」と、笑い合う。
マンションまで2人で空を見ながら帰った。
カラダが冷えたので、お風呂にお湯を入れて、順番に入ることに。
匠は、一緒に入ろうと言ってくれたが、
まだ、恥ずかしくて、匠に先に入ってもらうことにしたのだ。
すると、
「綾〜」と、私を抱きしめて、耳元で、
「もう終わった?」と聞くので、
「うん!」と言うと、
「え? え? そうなの? なんで教えてくれなかったの?」と言っている。
「ふふ、だって平日だったし……わざわざ言わないわよ」と言うと、
「そっか、そっか、じゃあ今日は、休み前の夜だよなあ〜」と満面の笑みで言う匠。
「そうだね」と笑ってしまった。
「じゃあ、お風呂入って来ま〜す!」と笑っている。
「ふふ、行ってらっしゃい」と手を振る。
コメント
1件
智之くんと別れて正解でしたね