「居ない…わよね?」
先程の事があって、気を緩めることが出来なくなってしまった。
「今の所は大丈夫そうだな。」
「この隙に耳飾りを返しに行きましょう。」
慎重に足を進め、妻の部屋へ向かう。
気が付けば日が落ち始め、より雰囲気が出てきた。
「着いた…」
妻の部屋に着き、緊張が走る。
ドアを開け、部屋に入る。
先程の女性が居ないか確認し、ドレッサーへと向かう。
そして机の上に耳飾りを置いた。
「これでいいのよね…?」
「あぁ…おそらくな」
「早く出ましょう。また追われるかもしない。」
部屋を出ようとした瞬間、
(何か…違和感があるわ…)
カイナは立ち止まり、少し考えて違和感に気付いた。
(お頭…ここまで無口じゃ無かった筈…)
少し後ろを振り返る。
すると…
シャンクスが居た筈の所に、女性が立っていた。
長い髪の間からこちらを睨みつける目が見える。
「ベック!走って!」
「!?」
「早く!追いつかれる!」
カイナはベックにそう叫び、全力で逃げた。
後ろでは女性がこちらを追いかけながら唸り声を上げている。
階段を駆け下りず、飛び降りる。
出口が見え、それに向かって一直線に走る。
扉を開け、無事城を出ることに成功した。
「はぁ…逃げきれた…」
「まさかお頭に化けてたとはな…」
「えぇ…でも、耳飾りを返す事は出来たわ…」
「あぁ…これで静まってくれると良いが…」
「一旦、街の方に行きましょう。」
「そうだな。」
カイナ達はひとまず、街へと向かった。
街に着き、仲間達が居る酒場に入る。
「おうお前ら!どこに行ってたんだよ!」
酒場には何人か出来上がった奴らが居た。
その中にはシャンクスも居た。
「…相変わらずね。」
「あぁ…だが、こっちの方がよっぽど良いな。」
「そうね。」
2人はカウンターの席に座り、酒を頼んだ。
カイナはふとマスターに聞いてみた。
「ねぇ、マスター。崖の上にある城について何か知らないかしら?」
「あぁ…あの城ね。あの城はもう何十年も前のものよ。」
「あの城で何かあったりしたの?」
「…何?興味があるの?」
「えぇ…まぁ」
「あの城は、裕福な夫婦が住んで居たの。でもしばらくして2人とも亡くなっちゃったの。船の事故でね。」
「!?」
「船の…事故?」
「えぇ…港を出てしばらくした所で嵐にあってそのまま溺れて亡くなったそうよ。」
カイナ達は驚いた。
あの老人から聞いていた話とは違う内容だったからだ。
(夫婦同士のトラブルじゃ無かったの…?)
「夫婦の前に誰か住んでたりしていたの?」
「さぁ…私が知っているのはその夫婦くらいよ。」
「そう…ところで、この街に結構なお歳のおじいさんを知っているかしら?」
「おじいさん?…この街には不思議な事に、おばあさんはいるけどおじいさんは居ないのよ。」
「……そう。ありがとう。」
ゾッと背筋が冷たくなる感覚が2人を襲った。
カイナとベックはこれ以上その話に触れるのをやめた。
しばらくしてカイナ達はその島を出た。
あのおじいさんは一体何だったのだろうか?
耳飾りは結局誰の物だったのだろうか。
他にも謎は残っているが、その真実を知る者は誰も居なかった。
End
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