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侵略者たち

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侵略者たち

7 - 006 異世界からの訪問者

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2024年11月20日

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 帰宅後、自然と四人はリビングに集まり、ずっと妄想話だと思っていたルリの話を真剣に聞くことになった。
「だから最初から言っているが、私は異世界からモンスターの口に入り、こちらの世界へやって来たのだ。まあ、最初こそ、優が魔王とは思っていなかったがな」


「その……俺が異世界の魔王ってのはどういうことなんだ……? 俺はこの世界で生まれて、鯨井って性もあるし、UT技術にも……」


 いや、俺は話をしていて、直ぐに理解した。


「俺は……孤児だったからUT技術に使われたんだ……」


 その一言に、学も何も言えなくなっていた。


「魔王とは知らなかったけど、異世界から来たんだろうことは私は知っていたけどね」


 驚くべき口火を切ったのは、ババアだった。


「ハァ!? 俺が異世界人って知ってたのか!?」


「あぁ。最初はただの捨て子かと思ったけど、アンタを拾った時のカゴに、どうしても読めない文字の羅列の中に『優』という文字だけが刻まれていた。だからアンタの名前は『優』になったんだよ」


「ババアが俺の名付け親だったのかよ!!」


 そんなツッコミも虚しく、ルリが話を遮る。


「正式には、あなたの名付け親は異世界の勇者。魔王を倒した者よ」


「異世界の勇者……? 魔王を倒したって……でも、俺が魔王なんだろ……?」


「詳細に話せば、あなたは魔王をそのまま引き継いだ魔王の子供。勇者は、この世界にいたらそのまま魔王になってしまうからと、こちらの世界に転移させた。『優しい人生を送れるように』と願って……」


「その唯一読めた文字が…… “優” ……」


「それで、あの蒼炎が魔王から継いだ力……。じゃあ、優さんの特殊な皮膚や怪力も……?」


「そう。魔王から継いだもの。だから、この世界の人間じゃ有り得ない性質でできている。そこに目を付けた学は、ある意味で天才なのかも知れないわね」


「まだ頭じゃ全然理解できてないけど、取り敢えずリルの言いたいことは理解した……。俺は魔王の子供で、勇者の手によって、普通の人生を歩ませたくて、この地球に転移させられた……ってことだな……」


「うん。まあ、転移させたの私だけど。あっちの世界で一番最強の魔法使いは私だから」


「そういや、初めて会った時もそんなこと言ってたな……。で、成長した俺の姿は分からなくて、たまたま最初に出会ったのが俺だったわけか……」


「いや、たまたまじゃないぞ。私がこっちに来た理由は、その後の魔王の子、つまりあなたの覚醒、及び暴走を止めて見守る為。だから、あなたの側に転移できるように指定した。でも、まさかあんな弱いモンスターに殺されそうになるくらい弱いとは思わなくて」


「それは……うるせぇな……。つーか、保護と見守りなら、俺が子供の頃……もっと早くにこっちに来た方がよかったんじゃないか……?」


「そこは、私たちも不可解な点。というか、私がここに来て初めて知ったこと。今となっては、次元も違うのだからそうなのだろうと思えるけど、実は、あっちの世界で流れる時間と、こっちの世界の時間は大きくズレてるの」


「大きくズレてる……?」


「うん。私が赤ちゃんのあなたを送り出して、いろいろ話し合ったりして、まだ数週間しか経っていないのに、あなたはもう大人になっていた。だから気付けなかった、と言うこともある」


「そんなに……ズレがあんのかよ……」


「だから、この世界の人たちには本当に申し訳ないと思っているわ」


「え……何が……?」


「あなたたちの言う “侵略者” 、つまり、私たちの世界のモンスターを送ってるの、私たちだから」


 その言葉に、全員の理解が追い付かず、絶句する。

 そして、


「ハァ!?」


 この一言である。


「お前……! 俺たちがどんな想いでUT技術を開発して、侵略者たちと戦ってるか分かってんのか!?」


「こっちの世界にも色々あるのー。弱いモンスターなら対処できると思ったし、殺して回るよりも、別の世界に送り出しちゃう方が楽だったんだよー」


 俺に揺さぶられるリルは、頭をガクガクと揺らしながら言い訳を述べ続けた。

 しかし、直ぐに真剣な眼差しを向ける。


「それに、時間軸もそうだけど、他にも私たちの予測を超えていた事態が起きていたの……」


「なん……だよ……」


「魔王の配下の四天王、私たちが倒したと思っていた四天王全員が、既にこちらの世界に来ていたの。身代わりで私たちに倒されたフリをして……。つまり、魔王の配下の四天王たちは、私たちと魔王が交戦する前から、あっちの世界を捨てていたことになる」


「ちょ、ちょっと待てよ……。それって、かなりヤバいことなんじゃないのか……?」


「えぇ。だから既に、モンスターに有利で、あなたたちに不利な進化を遂げられてしまった。あなたたちが弱いんじゃなく、あなたたちが不利なように肉体を作らされてしまっているのよ」


「で、でも……俺たちは宇宙の技術も借りて、新たな力で対抗してるんだぞ!?」


「それが、ある意味、不幸中の幸いだったのかもね。それがなければ、とっくに滅ぼされていたわ」


 その元凶はお前たちだろ、と言いたいが、異世界の魔王の配下たちが先に忍び込んでおり、そんな改造を地球人たちにしていたのなら、ルリを責められない……。


 でも、恐怖や不安もありながら、ヒシヒシと俺の心を支配する感情が昂っていた。


「なあ、それってさ……」


 三人は、俺の顔を見て笑みを浮かべていた。


「失敗作でUT特殊部隊に入れなかった俺でも、戦えるってことだよな……!」


 リルはニコリと声を返す。


「その通りよ。あなたはまだ、戦える」


「優さん……! やっぱり僕は信じてましたよ! あなたは他の方とは違う……世界を救う力だって!」


「なあ、ババア……! いいだろ……俺……」


 すると、ババアは黙って部屋の外に出て行くと、数分経って静かに戻って来た。

 そして、ガタリと大きな刀を机に差し出した。


「なんだこの刀……錆びまくってんじゃん……。こんなモン武器に出来ねぇだろ……」


「ルリ、アンタならコレ、分かるんだろ?」


「これは、勇者の使っていた剣よ。魔を封じる力があるから、これを手にしていれば、あなたがさっきのような蒼炎に支配されて、暴走することはなくなるわ」


 魔を封じる……そんな刀だったのか……。

 俺は、その刀をスッと持ち上げる。


「うおっ!!」


 その刀を持った途端、俺は膝から崩れ落ちる。


「なんだコレ……力が抜ける……。こんなモン、武器になんか出来ねぇよ……」


「魔を封じるんだから、魔王そのものを継いだあなたの力を、その刀は封じようとするわ。当たり前じゃない。でもあなたは、魔の力なんかに支配されて、暴走して、あなた自身がこの地球を葬りたくはないでしょ?」


 ギリ……


 俺は刀を構えながら、力を込めて立ち上がる。


「当たり……前だ……!!」


 そして、錆び崩れそうな刀を鞘から取り出す。

 すると、蒼い炎は刀にボワっと広がり、錆びは一瞬にして燃え消え去った。


「これが……魔王の力か……! でも……クソ……立ってるだけで精一杯だ……」


「あなたは力を付けなければいけない。元々、勇者と魔王の力は五分……。ならば、その力を封印されながらも、あなたはその刀を使いこなせるはず」


「す、凄いですよ……! 僕も協力します!!」


「学のあの機械……優の細胞を使った発明は凄いものよ。きっと、優の力になるわ」


「よし……そうなったら、バイトしなくてもいいって言われてるこの半年間で、もうババアに金稼げって言われなくてもいいくらい強くなってやる……!!」


 ――


「久しぶりだね、緑さんから連絡してくるなんて……」


「あぁ、アンタに話しておきたいことがあってね。”始まった” こう言えば……伝わるかい?」


「遂に彼が……。ふふ、賭けは僕の勝ちだね。彼の成長、楽しみにしているよ。宇宙の支配者として……」


 プツン……

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