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「うらあ!おらあ!拙者あ!」
あてずっぽうに振っている侍の刀が啓次郎に当たることはなかった。
争いが起こるとここまで変わってしまうのかと啓次郎は思う。
「侍さん!」
啓次郎が何度も名前を呼ぶもののそれには気付かず、刀を振りまくる。
啓次郎は決めた。銃口を侍に向ける。そして、撃つ。
バン!!
「はあ…はあ…いてええ…」
そう嘆く侍の腹付近は出血していた。侍はそこをおさえるが止まらない。
「拙者あ!!!」
啓次郎の姿を見ると、彼はそう叫んだ。最後の力で刀を握り、立ち上がろうとするが無理だった。
「お前えええ!!!!!!」
啓次郎はすぐにその場を去った。少し経ち、この街の奥へと入った。だからといって周りの建物は特に変化はない。更に奥へと足を踏み入れるとそこには「SOSキッズ」とドアにかかれた小さな古民家があった。そのドアはギィィという音とともに少し開いた。
「おじゃまします」
そう小声でいうと啓次郎は中へと入った。中は殺伐としていた。足元を見ると子供と思われる死体がいくつも転がっている。どれも息はしていない。床は真っ赤に染まっていた。
廊下を歩き、左の部屋の襖を開ける。そこの掛け軸の飾られている床の間の段差部分には一人の忍者姿の人が下を向いて座っていた。忍者は体格から見て女性。そして、赤紫色の忍び装束を着ていた。忍者は顔を隠している+下を向いているため顔が見えなかった。
「客ですか?私になにか?それとも、主人になにか?」
啓次郎の気配に気づいたのか忍者はそう質問する。
「…ここへ来るまで複数人の遺体がありましたが?」
「私が殺したんです。なにか?」
声色一つ変えず話す。相当のやりてなのだろうか?
「なぜ殺したんですか?この建物のドアの前にはSOSキッズとかかれていましたがそれはあなたがつくられたんです?」
「あなた呼びはやめませんか?私、椿千歳(つばきちとせ)といいます。そちらは?」
「永島啓次郎です…」
「永島氏は私がここをつくったとおっしゃりたいのですか?」
「まあここにいますから。妥当じゃないですか?」
「私は人の群れを狙っただけです。Gがなければなにもできませんので」
「だからといって未来ある子供を殺すのはどうなんですか!?」
啓次郎は椿の言ったことに抗議する。自身に子供がいるのもあるかもしれない。
「では大人を殺めるのはいいのですか?」
「うっ…」
その言葉に啓次郎は言い返せなかった。
「大人でも殺めるのは現世では禁じられています。でもこの世ではよろしい。でしたら大群を狙ったほうがいいのではないですか?大金ですよ。永島氏」
「…じゃあ俺は殺さないんですか?」
啓次郎は歯向かう。椿に。負けたくなかった。
「死にたいですか?主人みたいに」
「主人?」
「ええ。ここの主人も殺めましたよ。しつこかったものでしたので」
啓次郎はその時、すでに銃口は椿に向いていた。この狭い空間での争いは無理がある。慣れていない啓次郎は先手を打つことにしたのだ。
バン!!
銃弾が椿の横を通ってもびくともしなかった。
「九写江晃教(くじゃえあきのり)金を無駄遣いするクソ野郎ですよ」
「椿?だっけ?さっさと決着つけないか?」
「喧嘩好きなんですね。資料を裏切る」
「ふん。嫌いじゃあねえが」
「性格が変わったようですね。まあ俊敏さを」
そういい椿はその場で立ち上がる。啓次郎に目を向けると思えば目の前からいなくなった。
「そなたは遅い」
とても近い。耳元だ。そう思い啓次郎が右を向く。そこには赤紫の忍び装束を着た椿が立っていた。
「はっ!」
銃を構える。後ろへ下がりながら撃つ。
バン!!
その音だけが狭い空間で響く。そしてまた椿がいなくなった。
その隙にと思い啓次郎は出口のドアを目指し走る。
ドアを目前にし、啓次郎はそのドアに向かって体当りした。
ドン!!
やっと外に出てほっとするのもつかの間。啓次郎の頭上からくないが何十本も降ってきたのだ。
「はあ!?」
必死の思いでその範囲を超える。そのせいで体力は限界に近い。椿を倒すまでもつだろうか。そう思うものの啓次郎は周りを見渡す。しかし、赤紫の忍び装束を着た人物の姿はない。だが近くにいることは確実だ。啓次郎はその場で立ち止まった。
「椿…俺は違うぜ?」
そういい、啓次郎は銃口を誰もいない古民家の屋根へと向ける。そして、撃つ。
バン!!
啓次郎の目線の先には腹付近をおさえて立っている椿の姿があった。どうやら啓次郎は椿の行動を先読みし、銃を撃ったのだ。
「残念だったな。椿千歳」
膝を古民家の屋根につき腹をおさえる椿。
「…女王を倒して…」
啓次郎は銃を背負い、答える。
「女王…?」
「ああ…はあ…この世界を…支配している…悪化させている…殺して…」
「はっ!?その人はどこに?」
「南…西の…天空の…城に…」
椿はそういいその場で倒れた。
「南西の天空の城?」