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「….。」




いつものオフィスで、俺は心底呆れたような表情で言う。


「…イタリア。そろそろ離してくれないか」

「やなんね!!!」


今、どういう状況なのか。正直、俺にもよくわからない。今日はイタリアが遅刻せずに来たと思えば、急に俺の腕をがしっと掴んで抱きしめる。そして30分も経っている。

周りの国からの冷やかしが止まらないのでやめてほしいのだが、イタリアは頑なに離そうとしない。なんだってイタリアは今日こんなに構ってくるんだ、また悪夢でも見たのか?

そう聞けばいいものを、俺はただただ「離してくれ」だの「どうしたんだ」だの軽い言葉をつぶやくばかりだった。


「…今日は二人で設備点検の当番だろ、いずれにせよ一緒にいるんだからせめて立ち上がってくれ」


そういうと、イタリアは俺の腕にかかっていた力を緩めて、ゆっくり立ち上がった。俺もそれに合わせて立ち上がる。そして歩くと、イタリアは俺についてくる。俺は自分のデスクに向かいバッグから手帳とペンを取り出した。


「なんでそんなひっついてくるか知らんが、さっさと点検だけ終わらせよう。な?」

イタリアに目を向けると、イタリアもまたこちらを向いた。ぱち、と大きい瞳孔が俺を掴む。そうして「…うん」と小さくつぶやいたかと思えば、あっさりと俺の腕は解放された。

それでも、イタリアは妙に近い距離で隣を歩いてくる。なんなんだ、本当に。

とにかく、…仕事を終わらせたいから。否、この冷やかしの雨から抜けたいから、俺はオフィスから出ることにした。








「…なぁ、イタリア」

俺は手元の手帳に”異常なし”とかきこみながら、横に居るイタリアに問う。相変わらずイタリアは俺の横にぴったりとくっついている。少し暑いが、嫌な気持ちにはならなかった。


「なあに?」


「…やっぱり、最近疲れてるんじゃないのか。

不調は自分で気づくのもあるが、他人に言われて初めて気づくこともある。…そして、他人からも自分でも、わからないときだってある。」


「だから、無理はしないでくれ。辛いことがあったのか?…お願いだから、抱え込まないで貰いたい。」


「イタリアは大事な、…友達、だからな。」


勇気を振り絞って言った後、ちら、と上目遣いでイタリアの方を見る。イタリアは先ほどと表情を変えないまま、こちらを見つめていた。その様子に、ごくりと唾を飲み込む。イタリアは上下する俺の喉仏に視線を移した後、また俺の顔に視線を戻した。イタリアの口が開いた。


「…そうだよねえ、やっぱりイオ、疲れてるのかな」


イタリアは「これは参った」とでも言いそうな表情をつくる。想像もしていなかった回答に、俺は面食らってしまった。


「でもね、イオはそれでも会社に来たいと思うんだよ。…仕事がしたい、って訳じゃなくて」



「みんなに会いたい、…っていうか…」


イタリアは恥ずかしげもなさそうにさらっと言って見せたが、俺はその言葉にびっくりした。俺がそんなことを言ったら顔面が赤く染まるなんてことではすまない、足まで染まってしまうぞ。

…というか、なんでそんな急に…?そして、”会いたい”という気持ちだけでこんなに体調が悪くなるものなのか?


感情が国含め生物を揺るがすことができるというのは重々承知している。だが、俺はそんなイタリアにまだ疑いの目を向けていた。…あまりにもさらっとしすぎていて、嘘に見えたからだ。


そして、これだけあっさり言えるものなら、何故先ほどまで頑固として回答を避けていたのだろうか?


俺はますます目の前の”イタリア”という国についてわからなくなった。イタリアとは、ずっと昔から一緒に居るはずなのに。



でも、今はイタリアの言うことを信じるしかなかった。

「…なら、俺がずっと横にいてやるから。…それで、イタリアが元に戻るなら」


彼の様にスマートには言えなかった。俺はうつむいてしまった。が、イタリアはその言葉をちゃんと聞いていた。


「…うん、ありがとう

ドイツのクソ真面目なところには、本当救われるよ」


俺はその言葉を、喜んでいいかどうかわからなかった。






















「くっそあいつら、イチャイチャしやがって~~ロマンチックじゃないかなんだあの純愛」

書類を握りしめながらフランスは思わずそう呟く。


「純愛イタドイハスハスハスハスハスハスハスハス」

そしてガンギマった目でドイツらのうしろ姿を見つめる日本。


「実際どうなんでしょうね」

と、イギリス。


「どうなんでしょうねってなんだよ、」

フランスがそう問うと、イギリスはモノクルと軽く整えてから喋りだす。

「なんでも。単に、本当にいちゃついているだけなのか?と疑問になっただけです。お気になさらず」

「いや気になるわ!なに意味深なこと言ってんのさ」

「ふふ、…私はながーい歴史の国ですから。なんとなくわかるんですよ。」

イギリスは妙に誇らしげにそういう。フランスはそんなイギリスに少し不快そうな表情を向けながら、話を聞く。


「…なーんか、あの人闇抱えてそうだな、っていうのが。」


イギリスはそう言って、ドイツらの出て行った扉の方へ目を向ける。当たり前なのだが、そこにイタリアとドイツの姿は見えなかった。





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