巡り合い

「おーい拓実。早くこっちを手伝ってくれ」

おばあちゃんの声が部屋中に響き渡る。

「分かった。分かった」

そう言いながらパソコンを机の上に置き、

電源を入れた。

最近友達の中で流行っているゲームがあった。

それがテトリスだ。

ブロックを置いて横1列に揃ったら消せる。

とても単純なゲームだ。

僕はまだ高校生なのに、

スマホには慣れていなかった。

使い方も分からないし、打ち方も分からない。

だから基本、

友達とはメールでやり取りしている。

電源が入るとすぐにテトリスを始めた。

おばあちゃんに言われた事もすでに忘れていた。

「おーい拓実」

全ての声をシャットダウンして集中してテトリスを始めようとしたその時だった。

突然、画面が暗くなり、赤い文字が出てきた。

「え……」

そこには「ウイルスが入りました」

と書かれていた。

ウイルス！？僕は急いでウイルスを消すアプリを入れて対策した。

しばらく起動しなくなったが、30分後

ようやく起動する事が出来た。

「これでテトリスが出来るぞ」

そう呟きながら改めて、電源を入れた。

ホーム画面が出ると

メールのところが赤くなっていた。

友達からかな。

メールボックスを見てみるとそこには

雪だるまと書かれていた。

誰？

聞いたことのない名前に不安になりながらも

メールを開いてみる事にした。

トナカイへ

初めまして。私は雪だるまと申します。

マッチングアプリは初めてなので不安がありますが、トナカイという文字を見て少し親しみを感じました。

どうか仲良くしてください。

出来立ての雪だるまより

トナカイ？

マッチングアプリ？

意味が分からなかった。

何でこんなメールが僕のところに来るのか？

もしかしたら、ウイルスの影響かもしれない。

そう思ったが、トナカイという人がどこかにいるかもしれないので放置しておく事にした。

それから１週間が経ったが、

トナカイからのメールは来なかった。

もしかしたらもう届いているのかもしれない。

そう思った時、通知が鳴った。

雪だるまからのメールだった。

トナカイへ

１週間経っても返事が来なくて

不安になってます。

やっぱり私は恋愛に向いてないのかな……。

溶けそうな雪だるまより

このメールを見た瞬間、僕は無我夢中で

メールを打っていた。トナカイと偽って。

雪だるまへ

返信が遅れてすいませんでした。

僕もマッチングアプリは初めてなので。

雪だるまさんは何歳なんですか？

どこにいるのですか？

これからよろしくお願いします

トナカイより

こんなメールで大丈夫なのか。

少し不安になりながらも送信した。

次の日、

メールボックスには雪だるまから来ていた。

トナカイへ

はじめまして。

私は高校3年生です。

東京に住んでます。

トナカイさんは何歳ですか？

これからもよろしくお願いします

雪だるまより