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#溺愛
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春の陽光が降り注ぐ午後。皇宮の庭園は、柔らかな日差しと花の香りに包まれていた。
「パパ! おそい! セレナおなかすいたの!」
芝生の上に広げられた特等席。カイル殿下の膝の上に座るのは、三歳になった愛娘、セレナである。
「……っ、今、最高級のショートケーキを用意させた」
恭しく皿に乗ったケーキを差し出しているのは、この国の次期皇帝であるカイル殿下である。しかし今の彼は、ただのセレナ姫の家来(1号)に過ぎない。
「パパ、あーんして!」
「……あ、あーん、だと? ほら、あーんだ。こぼさないようにゆっくり食べるのだぞ?」
「……ぷっ! ぎゃはははは!殿下、マジで家来じゃないっすか!」
背後で、ギルバートが腹を抱えて笑っている。
「かつての氷の皇太子が、今や3歳児の執事っすか。格好良すぎっすよ!」
「うるさいぞ、ギルバート! セレナ、今の言葉は聞かなかったことにしろ。……ほら、お代わりはいるか?」
「もう! 殿下ったら、セレナ様を甘やかしすぎですよ!」
アンナが呆れ顔でサンドイッチの入ったバスケットを運んでくるが、彼は「……フン、俺がいつ甘やかしたというのだ」と強がりつつ、セレナが少しでも躓いて転びそうになれば、秒速で駆け寄ってクッションになろうとする。
私は、そんな「主従関係」を微笑ましく見守りながら、セレナに問いかけた。
「ふふ、セレナ。もうすぐお誕生日ですけれど、何か欲しいものはありますか? どんなものでも、パパが『命令』どおりに用意してくださいますわよ?」
殿下が「ああ、任せろ。俺に用意できぬものなどない!」と、家来の誇り(?)をかけて胸を張った。
するとセレナは、わがまま姫らしい「究極の注文」を突きつけたのだ。