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ずるい
カーテンの隙間から差し込む朝日で、そらとは目を覚ました。
隣を見ると、まなみはベッドの上で小さく丸まって眠っている。
(……昨日、寝言で「すき」って言ったくせに、
この寝顔でなんも覚えとらん顔してるんやろな…)
そらとは大きく息を吐き、ベッド脇で腕を組んだまま、じっとまなみを見下ろした。
「……反則っちゃろ。マジで」
その瞬間、ふわっとまなみが目を開ける。
まだ寝ぼけた瞳で、そらとを見上げた。
「ん……おはよ、そらと」
「……あぁ、おはよ」
「んふふ、なんか顔こわいよ?どうしたん?」
「別になんも」
そらとはわざとそっけなく返したけど、耳まで赤いのは隠せてなかった。
朝ごはんを二人で作ることになり、キッチンに立つ。
トースターからパンの焼ける匂いが広がる中、そらとは切り出した。
「なぁ、昨日さ……なんか、変な夢でも見よったん?」
「へ?夢?」
まなみはトマトを切りながら小首をかしげる。
「……寝言で、なんか言いよった」
「え!?なに言うたん!?恥ずかしいけん教えてよぉ~」
まなみは慌ててそらとの袖を引っ張る。
そらとは視線を逸らし、わざと低い声でつぶやいた。
「……『すき』って言いよった」
「っ……え、うそやろ!?///」
一気に頬が真っ赤になったまなみを見て、そらとは内心ニヤつきそうになるけど、必死で平静を装う。
「寝言やろ?……それとも本心?」
「そ、それは……ひ、秘密…っ」
視線を逸らすまなみの耳まで真っ赤だ。
そらとはため息をつき、包丁を置いて近づく。
すっとまなみの横顔に顔を寄せ、低い声で囁いた。
「……お前、ほんとにそう思っとるなら、もうちょっと自覚しろや。
おれ、昨日の夜から……めっちゃ我慢しとるんやけん」
その声に、まなみは動けなくなって固まる。
心臓の音がキッチンに響きそうなくらい大きくて、恥ずかしくてたまらない。
「……そらと、ずるいんやけど」
「お前がずるいっちゃろ。昨日からずっと、俺ばっかり意識させやがって」
そう言いながら、そらとはまなみの髪をくしゃっと撫でる。
「…ずるいのはそっちやけん…」
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