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「……すみません」
理性を取り戻したようで、玲奈はハッとした素振りを見せると、再び椅子に腰を掛けた。
「いえ、私も言い過ぎました……」
私にあったはずの強い決心が、今揺らいでいた。なぜ、この女がここまでで必死になれるのか。その答えが一つしか見つからなかったからだ。
――この高月玲奈は、本気で晃一を愛しているのではないか。
そもそも、私が復讐を誓ったのは、浮気一つが理由ではない。晃一に殴られ、捨てられ、愛されていないと知ったからだ。
しかし、誠実な晃一が、よこしまな気持ちで他の女に手を出すなどとは考えづらい。いや、考えられない。ならば――なぜ、浮気に至ったのか。なぜ、私を愛さなくなったのか。
この高月玲奈が全ての発端なのではないか。
声の消えた部屋では、フォークと皿のぶつかる音だけが聞こえる。それは、そう。まるで武器を失った二人が、荒れた呼吸を整えようとしながらも、闘志だけは消えず、むしろ、より大きく燃やして睨み合うように。互いの心音を確かめ、敵であるそれに心を覚えるように。
――あ。
フォークの音が一つ響く。気づけば玲奈の出してくれたカチャトーラは、もうそこに無かった。何だかそれで、今まで自分がどれほど小さな世界に居たかを思い知った気がして。
視界が開ける。正面の彼女の皿も、私と同じく終わったようだ。なんだ、二人同時に食べ終えたのか。