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「パパ、これ、校門のところにいたおじさんに貰ったの。パパのお友達だって」
下校時、迎えに行ったワシにひまりが差し出したのは、銀色に光る古びた「根付」やった。
それを見た瞬間、俺の視界が赤く染まるほどの怒りがこみ上げる。
その根付には、狂ったような筆致で「狂刃」の二文字が刻まれとった。
「……ひまり。そのおじさん、どんな顔しとった」
「えっと、サングラスしてて、お口の横に大きな傷があったよ。……パパ、これ、パパの宝物なの?」
鮫島や。あのアホんだら、わざわざあの子に接触しおった。
俺はひまりを抱き上げ、周囲を鋭く一瞥した。
校門前の人混み、送り迎えの保護者たち…そのどこかに、あの腐ったハイエナの視線が潜んどる。
「……ああ。……昔、パパが無くしたゴミや。ひまり、これ、ワシが預かっとくわ」
事務所に戻るなり、俺は根付をデスクに叩きつけた。
「……和幸!長治!鮫島の野郎、校門まで来おった。街中の防犯カメラ、商店街の連中、全員に聞き込みや!一分一秒でも早く、あいつの潜伏先を突き止めろ!!」
「ハッ!すぐに手配しますッ!!」
和幸たちが飛び出していく。
俺はひまりを奥の部屋で和幸の妹・事務員に預け、一人、金庫から一本の長ドスを取り出した。
「……鮫島。…蛇頭会を裏で操っとったんも、お前か。……ひまりを怖がらせた罪、万死に値するで」
その時、俺のスマホに非通知の着信が入った。
出た瞬間、受話器越しに低く、湿り気を帯びた笑い声が響く。
『……よぉ、吾郎。…いいパパさんじゃねぇか。……あの根付、懐かしいだろ?お前が俺のツラを焼いた時、落としていったやつだ』
「……鮫島、ワシの前に出ろ。…ガキを巻き込むな」
『……ククク。お前が大事に育ててるその「花」、……根っこから引き抜いて、真っ黒に染めてやるよ」
「…なんやと」
「今夜、あの古びた倉庫で待ってるぜ。……一人で来い。来なけりゃ、明日の朝、お嬢ちゃんのランドセルには……何が入ってるかねぇ?』
プツリ、と音が切れる。
俺は眼鏡を外し、指でフレームを強く軋ませた。
「……和幸、おるか」
「はい、兄貴……」
ドアの影に立っていた和幸に、俺は背を向けたまま告げた。
「……ワシが行った後、もし……もしワシが戻らなんだら。ひまりを連れて、この街を出ろ。……金は金庫に一生分入れといた」
「兄貴!何言ってるんすか! 自分らも行きますよ!!」
「……これは、ワシの『ケジメ』や。……親父として、過去を完全に断ち切るためのな」
俺は黒いロングコートを羽織り、ひまりのいる部屋のドアを一度だけ見つめた。
中から、楽しそうに笑うひまりの声が聞こえる。
(……待っとけ、ひまり。……本当の『掃除』を終わらせてくる)
夜の帳が下りる街へ、俺は一人、闇に溶けるように歩き出した。
#シリアス
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