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「あ、もしもし大和さん? 樹奈でーす」

その夜、日付が変わる少し前に樹奈は大和へ電話を掛けた。

「あのね、実は白雪ちゃんの事なんだけどぉ」

その内容は勿論詩歌絡みで、何か良からぬ事を考えていた樹奈は詩歌への恋心を抱き、諦めきれていない大和にも協力させようと電話を掛けたのだけど、

「え? もうどうでもいい? 何で? この前は諦められないって言ってたじゃん。だから樹奈にお願いしたいって」

大和はもう詩歌への気持ちが冷めつつあったようで、樹奈からの話に興味を示してはいなかった。

「そんな事ないよ、大丈夫! 樹奈の言う通りにすれば必ず上手くいくから…………あ、そう。じゃあもういいよ。さよなら」

結局、何度か説得を掛けたものの大和の気持ちは変わらなかったようで、思い通りの展開に事が運ばない樹奈はますます機嫌を悪くした。

「郁斗さん、ちょっといいですか?」

店が終わりキャストたちが帰って行く中、太陽は再び店を訪れていた郁斗に話し掛ける。

「どうした?」

「実は、樹奈の事なんですけど」

「樹奈がどうかしたのか?」

「それが、帰り際に突然店を辞めると言ってきたんです」

「辞める? アイツが?」

「はい。ひとまず、保留という形にはしてありますが、本人の意思は固そうです」

「……そうか」

樹奈が店を辞めるという話には、正直郁斗は驚いていた。

スカウトしたての頃はイマイチ乗り気じゃなかった彼女も今ではそれなりに楽しんでやっていたからだ。

そんな彼女が辞めたいと思っているのは恐らく、自分が詩歌を優先しているからだという事は何となく予想出来ていた。

「悪いな、俺の方でも一度話をしてみるよ」

「すみません、お願いします」

太陽と話を終えて車に戻った郁斗は一度樹奈と話をしようと電話を掛けた。

すると、

『もしもし~?』

何やらかなり酔っぱらっている様子の樹奈が電話に出た。

「樹奈、お前、酔ってるな?」

『そんなことないですよ~? どうしたんですか?』

「……さっき太陽から聞いた。店を辞めたいと言ったみたいだね?」

『あー、その話ですか。そうです。だってぇ、郁斗さんが全然樹奈をみてくれないからぁ』

「約束を破ってる事は悪いと思ってるよ。けど、今はどうしても時間が作れないんだ」

『白雪ちゃんの事が優先なんですもんね~』

「…………樹奈――」

『いいですよ、もう。とにかく、樹奈はもう辞めます。次の仕事も決まりそうだしぃ』

「次の仕事?」

『とにかく、今はお友達と楽しんでるでぇ、もう切りますね』

「あ、おい、樹奈――」

まだ話があった郁斗だけど、樹奈が一方的に電話を切ってしまい話は途中で終わってしまった。

この時、樹奈は友達と一緒だと言っていたのだが、その友達というのが、黛組と繋がりのある組織の人間だった。

「おい樹奈、誰だよ、今の電話」

「え~? 樹奈が良いなぁって思ってた人」

「何で過去形なんだよ?」

「だってぇ、その人ってば、一人の女の子に夢中なんだもん」

「へぇ? どんな女なんだよ?」

「花房 詩歌っていう、世間知らずのお嬢様タイプの子。純で清楚系が受けるのかなぁ。樹奈には無理ぃ」

「花房……詩歌?」

「なぁに、やすくん、知ってるの?」

「いや、その名前……どっかで聞いた事あんだよな…………あ! 確か……」

「ん? 何?」

「いや、ちょっと知り合いが探してる子の名前がそんなだった気がすんだよ」

「へぇ~?」

樹奈と一緒に飲んでいるのは中宿なかやど 泰典やすのりという男で、女ウケしそうな爽やかな顔立ちで一見優しそうに見える彼は、堅気の人間ではない。

「あ、じんさんお疲れっす。黛さんが探してるって言ってた女いたじゃないっすか、その子の名前って何て言いましたっけ? え? あー、そうっすか。あの、実は俺、その子の事知ってる人と一緒に居るんすけど…………はい、分かりました、それじゃぁ、また」

泰典は誰かに電話を掛け、その話終えると、

「なぁ樹奈。その詩歌ちゃんについて詳しく教えて欲しいって人が居るんだけど、これから会ってくれねぇ?」

酔っぱらっている樹奈にそう話を持ちかけた。

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