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一つ屋根の下、地雷注意報

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一つ屋根の下、地雷注意報

41 - 第三十九話:「あの子の場所、知らない顔」

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2025年06月19日

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週末。るかは朝からそわそわしていた。


制服の上に羽織る指定のパーカー、

目元のメイクはいつもより薄く、

髪も少し、きっちり整えている。


「学校、文化祭なんだってな」


「……うん。クラス出し物あるし、行かなきゃ」


「見に来てほしい、とかは……?」


るかはコーヒーを飲みながら、

視線だけで「は?」と言った。


「いや、来てもいいけど……別に楽しくないと思うし」


「そっか」


「あと……知り合いに見られるの、めんどくさい」


「俺の存在が?」


「……そういう言い方やめて」


「ごめん」


「……じゃ、行ってきます」


「いってら」


バタン、と玄関が閉まった。


そのあと、5分くらいぼーっとして、

俺は支度をはじめた。



最寄り駅から3駅。

るかの通っている高校は、駅から少し坂を登ったところにある。


派手すぎず地味すぎない、普通の私立校。

だけど、るかの制服姿がそこにあるって思うと、

なんだか不思議な気分だった。


校門前では、チラシを配る生徒たちが元気に声を出していた。


俺は「保護者っぽい顔」をして、校内へ。



るかのクラスは3年4組。

出し物は「ゆるホラー脱出ゲーム」。


教室の前に、列ができていた。


俺は気づかれないように、帽子を深くかぶって並ぶ。

廊下には、クラスメイトらしい女子たちの声が飛び交っていた。


「るか、案内役すごいハマってるよね」

「びっくりするほど無表情で案内してくる」

「てか、制服めちゃ似合うな〜あの子」


聞こえた名前に少し、胸がざわつく。


でも、褒められてるのがなんか、うれしかった。



教室の中は、黒いビニールで仕切られた簡易迷路。

中に入ると、やたら薄暗く、音だけで演出されていた。


そして、曲がり角の先。


「……こちらへどうぞ」


そこに、案内役のるかがいた。


表情は淡々としていて、

声も静かで抑えめ。


でも俺は、その声をすぐにわかった。


帽子のつばを下げて、気づかれないように、

「知らないふり」をして進んでいく。


るかは、ちゃんと“案内役”をしていた。

誰にでも、同じトーンで、同じセリフで。


なのに、それが少しだけ――

遠く感じた。



脱出ゲームが終わり、外に出る。


俺は校内をもう少しだけ歩いて、

写真部の展示や、購買の特設コーナーをのぞいたあと、

静かに学校をあとにした。



夜。


帰ってきたるかは、少しだけ疲れた顔をしていた。


「おつかれ」


「……うん。足痛い」


「そっか。おつかれさま」


「……」


「……なんか?」


「……チョコミント買ってきてくれてたら許す」


「買ってきたけど、何を許されたのかわからん」


「別に。なんでもない」


るかはソファに座り込んで、

袋からアイスを取り出した。


俺は、あのときの案内役の声を思い出していた。


あんな風に、誰にでも同じ顔ができる子なのに。

俺にだけ、文句を言ったりするの、

ちょっとだけ、特別っぽい。


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