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「後は任せて、休んでろ……ヒロ」
「……」
そこまで言ってヒロユキは強制的に意識をシャットアウトされ、身体全体を糸が包み込む。
「さて、と、これでよし」
「貴様は……【アオイ】」
「あれ?名前知ってるの?」
「ほざけ、前の舐めた口調はどうした?」
「あー……なるほど、俗に言う“もう1人の僕”って奴か」
魔神は魔法陣を展開する。
「た、タンマタンマ!!」
アオイは魔神に対して両手をあげた。
「……何の真似だ?」
「そのぉ……すっごい接戦をした後で非常に言いにくいんだけど……戦いなんて痛いことやめて、話し合いしません?」
「は?」
「確かに、魔族に痛ぶられて死んでいった人達の事を考えると、こんなこと言うのはダメだと思う。だけど、僕達も魔族を殺してしまったんだ。だから――おあいこって事で」
指をクロスさせてバッテンを作り、苦笑いで説明するアオイ。
魔神との間に奇妙な間が流れる。
「……冗談で言ってるのか?」
「いや、本気だけど」
「なるほど……良くわかった」
「分かってくれた!」
アオイの顔がパッと明るくなる。
「じゃぁ1つ聞いて欲しいお願いがあるんだけど――」
「__勇者の器ではない、ということがな!」
突如、魔神の足元に魔法陣が浮かび上がり、光が走り始める――その刹那。
「こうなると思ったよ!くそぅ!」
アオイの姿がふっと掻き消えた。
「何!?」
魔法陣が発動する前に拳が突き刺さり、魔神の巨体が宙を舞う。
(この我が……まったく“見えなかった”だと!?)
受け身を取る間もなく、すでに回り込んでいたアオイが逆方向へと吹き飛ばす。
「ガ、ハッ」
魔神は支柱をいくつも突き破りながら回転し、途中で飛び出してきたアオイの回転蹴りで床に叩きつけられた。
「っ!げほっ」
吐血しながら【分析】を発動するが、結果に目を疑う。
【LV2】
「……貴様は……何者なんだ……」
アオイはわずかに口角を上げて答えた。
「俺は俺だ。他の誰でもない、ただの人間だよ」