「っ!」
目を開くとそこは俺の部屋だった。
勢いよくベッドから飛び起きたせいでベッドから軋む音が聞こえる。
「夢、か……」
そんな事を呟きながら兄さんの事を思い出す。
出会った当初の兄さんは氷のようなドールで、どことなく冷たかった。
だが、俺の主が生まれてからか、主とロシア帝国さんが不仲になってからだったか、兄さんは明るく振る舞うようになった。
きっとあれが元々の兄さんだったんだと思う。
俺が生まれた時は、戦争中だったからな…。
なんて、過去の事を思い出していると、チクタクチクタクと音を出し続ける壁掛け時計が視界に入った。
短針はもう三つ程進んでいた。
想像よりも長く寝ていたらしい。1時間程度で起きる予定だったんだが、もう過ぎてしまった事は仕方が無い。
もう3時半だ。報告書について主とあれこれ話していたらあっと言う間に晩飯の時間になるだろう。
掛け布団を押し退け、ベッドを降りる。
よく寝たからだろうか?
あれほど疲れていた体ももう回復している。
まさか、兄さんとであった、俺が生まれたあの日の夢を見るなんて、思いもしなかったな……。
そんな事を考えながら、身だしなみを整える。
姿見を見ながら、髪を軽く整え、服のシワを軽くのばす。
ドアを開けて俺は少し軽くなった足取りで、書斎に向かった。
書斎のドアの前で、俺の足は一度止まった。
報告書の内容は、前までなら何とも思わなかっただろうが、主はどうやらナチスに気があるような気がする。
それは勿論、津炎に情が移った俺も調べていてなかなかにキツイものだった。
一度大きく息を吐いてからドアをノックして、書斎に入る。
「主炎、まだ寝てなくて良いのか?」
俺の顔を見た主の第一声はそれだった。
「あぁ、3時間も寝たんだ。もう大丈夫だ」
俺がそう言葉を返すと、主は少し安心したような声で「そうか」と一言だけ口にした。
重苦しそうな空気の流れる書斎で、主がしばらくの沈黙の後、そっと口を開けた。
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